高血圧には減塩とカリウム摂取を

奈良県医師会 山本忠彦

数年前から高血圧は、「収縮期血圧 130mmHg、拡張期血圧 80mmHg 以上が持続すること」と定義されるようになり、血圧を下げる目標値も年齢や疾患の有無で多少の差はあるものの、おおむねこれら以下となりました。

血圧が高めより低めのほうが脳卒中や心臓発作が減って健康寿命が延びることが明らかとなり、高血圧の基準値が段々と下がってきています。このため健康診断などで高血圧といわれる人が増えています。

「血圧が高い」と言われたら、まず生活習慣を見直しましょう。食事と運動と禁煙が三本柱ですが、今回は食事にしぼってお話しします。

食事の見直しで大切なのは、塩分(塩化ナトリウム)を控えることと、カリウムを十分に摂ることです。塩分は体に水分を保つ働きがあり、そのため血管内の血液量が増加し血圧を上昇させます。高血圧の人では「一日の塩分摂取量を6g以下にする」ことが推奨されており、厚労省の調査によれば、「日本人は平均一日 10g摂取している」という報告から、とにかく塩を避けることが必要です。一日1gの減塩で約 1mmHgちょっとの降圧効果が期待できます。

最近、カリウムはナトリウムを排出し、血圧を下げる作用があることが分かってきました。

中国で行われた大規模研究で、食塩の塩化ナトリウムの 1/4 を塩化カリウムに置き換えた代替食塩を使うことにより、脳梗塞や心筋梗塞、さらには死亡率も減らしたという研究結果から、高血圧症におけるカリウム摂取が注目されています。

カリウムを多く含む食品にはバナナやオレンジなどの果実、トマトやパセリなどの野菜、里芋や山芋などイモ類、納豆や枝豆などマメ類、ナッツ類があります。これらの食材を多く含み、肉よりも魚類を中心にしてオリーブオイルで味付けした、いわゆる「地中海食」といわれる料理が健康的な食事の一つとして以前から推奨されてきました。これまでなぜ地中海食が血圧を下げるのかよく分かっていませんでしたが、カリウムが豊富な点がその一因のようです。

地中海食は、高血圧症などの生活習慣病だけでなく、がんやパーキンソン病、アルツハイマー病のリスクを減らすことが報告されています。

一方で、体を健康に保つために減らすべき食材としては、豚肉、牛肉などの赤い肉、ソーセージやハムなどの加工肉、バター、ラードなどの動物性脂肪、お菓子や砂糖入り飲料などがあげられています。

和食は地中海食に似てヘルシーですが、塩分量が多くなるのが難点です。そこで薄味が物足りないという人には、塩分を 50%カットしてその分を塩化カリウムにおきかえた「やさしお®」という人工的な塩が市販されており、それを用いると減塩とともにカリウム摂取が同時にでき一石二鳥です。

スーパーの塩や調味料売り場をのぞいてみれば、たいていは見かけることができます。

なお、腎臓が極端に悪くなるとカリウムが排出できなくなり、体内にカリウムが蓄積されます。医師から腎臓病を指摘され、カリウム制限が必要と言われている場合は、その指示に従ってください。