検尿で分かる健康状態や病気

奈良県医師会 前田純宏

健康診断では血液検査が重要ですが、採血は、痛みや、細い血管の方は苦労があり、気が重い方もいらっしゃると思います。検尿は日常の行動(?)を検査に出すだけです。多くの情報が分かる優秀な検査ですので、役に立つ点と注意点を知っていただき、健康に役立てていただきたいと思います。

 

◎検尿で何を見るか

①尿の色

「赤」→血尿の可能性

「黄」→肝臓病の可能性

「濃い」→脱水・血尿の可能性

「濁り」→膀胱(ぼうこう)炎の可能性。

②一般検査(主に試験紙)

pH(酸性・アルカリ性)、蛋白(たんぱく)、糖、ビリルビン(黄疸<おうだん>)、潜血、比重、などを試験紙で調べます。

③沈渣(ちんさ:顕微鏡検査)

尿を遠心分離器で液体と固体に分け、固体にどんな成分があるのかを顕微鏡で確認します。赤血球、白血球・細菌(→膀胱炎)、結晶(→結石)、円柱(→腎臓病)などを認めた場合、それぞれ考えられる病気について調べます。

④定量

クレアチニン(尿に出される老廃物)や蛋白などの、尿中の電解質や溶解物質の量で、異常を検索します。スポーツ選手のドーピング検査も薬物の尿定量検査の一種です。

⑤細菌培養・PCR

膀胱炎や性感染症の原因となる大腸菌、クラミジアなどの細菌の種類を調べます。

 

◎検尿で分かる病気

①血尿が出る病気(尿路結石症、膀胱がんなどの尿路上皮がん、腎炎)

試験紙や顕微鏡で分かる程度の軽い血尿でも病気の早期診断が期待されます。さらに目に見える(肉眼的)血尿はもっと深刻で、何らかの病気の可能性が高く、1回見えた血尿が治っても安心せず、診察・検査をお勧めします。

②膀胱炎

顕微鏡検査で白血球・細菌を認めます。

③糖尿病

試験紙で糖反応が陽性であれば、血糖の検査をして確定診断をします。

④腎臓病

蛋白尿・円柱を認めれば腎臓病を疑い、さらに精密検査を行います。

⑤肝臓病

試験紙のビリルビン(黄疸の原因)反応で陽性が出れば 肝臓や胆のうの病気が疑われます。

⑥淋(りん)・クラミジアなどの性感染症

以前は男性の尿道や女性の膣に綿棒を挿入していましたが、今は尿だけで診断が可能です。ただし通常の検尿(中間尿が原則)と違い、1時間以上尿を貯めた上で、初めの尿を捨てない「初尿」が必要です。

 

◎検尿での注意

外陰部の常在菌や雑菌の混入を防ぐために、特に女性の場合に初めの尿を捨てた中間尿を採るのが原則です。

検尿の時に少ない尿量しかたまっていないと、中間尿として出せず、精密検査に必要な尿量としても不足することにもなります。

泌尿器科では「毎回必ず検尿」が原則となりますし、内科・産婦人科などでも、病気の診断のために突然「検尿しましょう!」と言われることがあります。初診(症状が出て初めての診察)では、家を出る前や病院のトイレで、診察前に排尿するのは控えておくことが望まれます。

また、連日の飲酒や肉食のあとや、激しい運動の直後、疲労時、便秘時は、尿に異常所見が出ることがあるので、健康診断のための検尿ではこれらを避けることが望ましいです。

 

もちろん検尿が万能というわけではなく、採血や画像診断など、他の検査との組み合わせで診断できる病気もたくさんあります。それを知った上で検尿をうまく利用していただければ幸いです。