「痛風」にならないために

奈良県医師会 中垣公男 

「痛風」とは、関節に尿酸の結晶がたまり、関節に激しい痛みが出る病気です。「風が吹いただけで痛みがでるくらい痛い」とのことで、「痛風」と名付けられました。

痛風の患者は国内には約60~70万人いると言われ、30歳以上の男性に多く発病します。痛風は、通常1つの関節だけに痛みが生じます。足の親指の付け根に生じやすいです。尿酸値が「7.0mg/dL」を超えると、痛風を起こしやすくなります。

血液中に増えすぎた尿酸は、関節内で結晶となり白血球はこれを異物と認識し、攻撃して激しい痛みや腫(は)れを引き起こします。超音波検査では軟骨の表面に痛風結晶が沈着するため、軟骨の表面が白く見え、骨の白い線と合わせて2本の線が走るように見えます。

痛風の原因となる尿酸の大本は「プリン体」です。プリン体は、主に肝臓で分解されて尿酸になります。しかし、尿酸が血液中に多い状態が続くと、関節にも尿酸がたまるようになります。高尿酸血症の状態のままでいると、ある日突然、痛風発作に襲われます。痛風発作は夜中から明け方に起きることが多く、痛みのピークは発症後2~3日間続きます。

痛風発作が起きた時には、できるだけ早く薬を使って痛みを抑えることが大切です。基本的には鎮痛剤を服用します。腎機能障害や胃潰瘍(かいよう)などがあり鎮痛剤が使用できない場合や、鎮痛剤でも十分に効果が得られない場合はステロイド薬を使用する場合があります。

痛みが治まったからといって尿酸を下げる治療をせずにいると、半年から1年後に再び痛風発作を起こします。徐々に痛風発作が起こる間隔が短くなって頻度も増え、痛みや腫れも長引くようになります。そして、痛風結節や腎障害・尿路結石などの怖い病気を引き起こす可能性が高くなります。

また、高尿酸血症・痛風がある人は「メタボリックシンドローム」に陥りやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症を伴っている人が多くいます。これらの生活習慣病によって動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの、命にかかわる病気を発症する危険が高くなります。

治療は、尿酸降下剤を内服し、尿酸値を「6.0mg/dL以下」に減らします。

食べすぎ、運動不足、ストレスで肥満になっても尿酸は増えます。プリン体は主に体内で産生されますが、20~30%は食事から摂取されます。

特にレバー類、赤身の魚(太刀魚・カツオ・マイワシ・干物など)、白子(イサキ・ふぐ・たら)、一部の健康食品(クロレラ、ビール酵母、ローヤルゼリーなど)、肉類(豚・牛・羊)、エビ類(大正えび・オキアミ)はできるだけ控えてください。

野菜中心の食事内容が望ましいです。お酒はできるだけ控えてください。水分をたっぷり取ることで、尿酸を尿から排泄(せつ)しやすくなります。コーヒーも痛風の発症を抑えます。牛乳をはじめとした乳製品も、尿酸値の低下を促す効果も認められます。

健康診断で「尿酸が高い」と言われた方は、症状がなくても近くの内科か整形外科などの医療機関を受診してみてください。