診療報酬が改定になるとはどういうこと?

奈良県医師会 笠原 仁

この4月には薬価、6月からは診療報酬が変わりました。今回はこの診療報酬についてお話ししたいと思います。

診療報酬とは、2月1日掲載の本欄『日本の医療保険制度について』でお話しした公的医療保険制度に基づいて行われた医療行為に対して支払われる費用のことを指します。そしてこれもまた、一つ一つの医療行為に国が決めた全国共通の公定価格(点数)がついており、それを足し合わせて、そのうちの1割から3割を患者様から、残りを保険からもらう仕組みです。医療機関はこの診療報酬が収入の大多数を占めていて、看護師さん、事務員さんなどの人件費、薬や機械、施設の維持費をここから出しており、2年に1度、その単価が見直されます。これが診療報酬改定と言われるものです。さて、一つ一つの医療行為に点数がついている、と言いましたが具体的にはどのような感じでしょうか。今回の改定では、多くの新聞で他業種の賃上げ、物価高に対応して初診料、再診料が値上げされた、と報じているところが多いようです。しかし、内科を主として診察されている多くの診療所では、次のようなケースが多いため減収になるところが多いと予想されています。

そのケースとは月に1回、高血圧、高脂血症、糖尿病のいずれかで通院しているケースで、定期的に診療所に通っている多くの方がこの疾患でかかられていて、この算定になると思います。このケースでは毎月160円下がることになり、自己負担金は1割負担の方で20円、3割の方で50円下がります。たとえば、この計算の仕方で200人の患者さんがいらっしゃれば、診療所の収入としては毎月3万2,000円、1年で38万4,000円下がることになります。たった160円でも1年にするとそれなりの金額になります。

再診料、生活習慣病管理料など上がっている項目もありますが、なくなったり、下がったり、新しくできたり、という項目がたくさんあります。特に処方箋料については、薬を出す場合には必ず必要なものなので、これが下がるということは、たとえ初診料、再診料が上がっても、薬を出す場合にはトータルとしては下がってしまうことになります。

政治家がよく、話が切り取られて報道された、と憤っている記者会見をよく見ますが、私たちもその気持ちはよくわかります。

定期的に通院されていましたら、5月と6月の診療報酬の項目で、上がった点数、下がった点数を見ていただくことも、みなさんの保険医療の正しい理解につながるのでは、と思います。