お酒は百薬の長?

奈良県医師会 中谷敏也

お酒は昔から「百薬の長」と呼ばれ、適度な飲酒はリラックス効果や社交の場での楽しみとして親しまれています。しかし、飲み過ぎると健康を害し、病気の原因となることもあるため、どのようにお酒を楽しむかはとても重要です。

2024年2月に厚生労働省から発表された「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、健康に害を与えない飲酒方法についての指針を示しています。

ここでは、それを参考に健康を保ちながらお酒を楽しむ方法を紹介します。

 

▶適量を守ることが大切

ガイドラインでは、飲酒の適量について基準が示されています。

例えば、成人男性が1日に飲んでよいお酒の量は、日本酒なら1合(180ml)、ビールなら中瓶1本(500ml)程度が目安です。女性や高齢者は、さらに少ない量が推奨されています。

重要なのは、これを「1日あたり」の目安とすることで、この量を超えて毎日飲んでしまわないことです。毎日お酒を飲むのは、体に負担をかけるため、週に2日以上は「休肝日」を設けることが推奨されています。これにより肝臓を休ませることができ、長期的な健康に寄与します。

 

▶飲み過ぎのリスクを知る

少量のお酒は「リラックス効果がある」と言われていますが、飲み過ぎると逆に健康に悪影響を及ぼします。

ガイドラインでも、過度な飲酒がアルコール依存症や高血圧、肝臓病、がん、心臓病などのリスクを高めると警告しています。特に、日本人の約4割はアルコールを分解する能力が低いとされており、自分のお酒の強さを知り、自分の限界を超えないことが大切です。

 

▶状況に応じた工夫

お酒を飲む時は、どんな状況で飲むかにも気をつけると良いでしょう。

例えば、食事と一緒に飲むことで、酔いが急に進むのを防ぎ、飲酒量をコントロールしやすくなります。

また、度数の低いお酒や、ノンアルコール飲料を選ぶことも、健康的に飲酒を楽しむ方法の一つです。最近では、ノンアルコールビールやカクテル風味の飲み物なども増えてきているので、これらを上手に取り入れるのも良いアイデアです。

 

▶社会的な責任も意識する

お酒を飲む際には自分の健康だけでなく、社会全体への影響も考える必要があります。飲酒運転や暴力行為、また飲み過ぎて仕事や家庭生活に支障をきたすことは避けなければなりません。

ガイドラインでは、無理にお酒を勧めないことや、適度な飲み方を社会全体で共有することが大切だ、と強調されています。お酒の場でも、他人に無理強(じ)いせず、自分自身もコントロールできる範囲で楽しむことが大切です。

 

▶健康を守りながら楽しむ

お酒はリラックスや社交の場を楽しむための一つの方法ですが、飲み過ぎると健康を害する可能性があります。

今回のガイドラインは、私たちがどのようにお酒と付き合うべきか、具体的なアドバイスを示しています。

お酒を楽しむ際には適量を守り、休肝日を設け、自分の体調に合った飲み方を心がけましょう。そして、無理に飲まないこと、無理に飲ませないことを意識して、周囲の人とも健康的なお酒の楽しみ方を共有していくことが大切です。

お酒を「百薬の長」として楽しむために、正しい飲酒習慣を身につけ、健康を守りながらお酒との良い付き合い方を心がけましょう。