糖尿病ってどんな病気?

奈良県医師会 波床朋信

(はとこクリニック)

糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態となった病気です。

「慢性的」とは長時間持続すること、またはゆっくり進行することを表します。例えば、たくさん甘いものを食べた直後に一時的に血糖値が高くなっても、その時以外の血糖値が高くなければそこまで問題ではありません。ただし、甘いものを毎日たくさん食べると、それは「慢性的」となってしまいますので、注意が必要です。

厚生労働省の発表によると、糖尿病患者数は「予備軍」を含めて日本に2000万人程度であり、日本人のおよそ5人に1人という計算になります。20年前と比較すると増加しており、特に30歳台、40歳台の若年層での糖尿病患者数が増加しています。このことからも、糖尿病の診断や治療は非常に重要です。

診断はまず疑うことから始まります。糖尿病になったとしても、腹痛や息苦しさなどの明らかな症状が出ることはほぼなく、血糖値がとても高くなると、まず「尿量が増え(多尿)」ます。尿量が増えることで、身体の中の水分が減り(脱水状態)「のどの渇き(口渇)」を感じ、そのため「水分をたくさんとる(多飲)」ようになります。

「多飲」の際に、水やお茶ではなく、スポーツドリンクやジュースを飲むと、より血糖値が上昇するために症状が悪化してしまいます。「口渇」「多飲」「多尿」といった症状は全てそろうわけではなく、一部の症状のみのこともあります。

無症状でも診断は可能です。多くの方が診断をされるのが「健康診断(健診)」です。健診では多くの場合は尿検査で尿糖を、一部では血液検査で血糖値をチェックします。血糖値には朝食を取る前の「空腹時血糖値」と食事摂取後の「随時血糖値」があります。

各々の血糖値に糖尿病診断の基準が設けられていて、基準値は空腹時血糖値は「126mg/dL以上」、随時血糖値は「200mg/dL以上」です。健診は朝食を食べずに受診されることが多いと思いますので、空腹時血糖値を見て糖尿病の診断を行います。

その他にもHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と呼ばれる指標があります。これは1~2ヶ月の血糖値の平均値を反映する指標で、一部の健診や人間ドック、医療機関の受診時に測定されます。糖尿病診断の基準は「HbA1cが6.5%以上」です。

糖尿病と診断されたら、どのような治療が必要でしょうか。

糖尿病の治療は大きく3つに分けることができて、①食事療法、②運動療法、③薬物療法です。一般的に①、②で血糖値があまり下がらなかった場合に③を開始しますので、①、②が非常に大切になります。各個人で①、②の内容は異なりますが、大切なことは「継続できる」ことです。

糖尿病と診断された直後は極端な食事療法や運動療法を行い、血糖値が大きく改善しますが、数か月後には継続困難のため血糖値が再び悪化するケースが散見されます。もちろん頑張っていただくことは素晴らしいことですが、今後ご自身が継続できる内容を見極めることもまた大切です。

今回は糖尿病の診断や治療に関してお話ししました。血糖値が高い状態を放置すると、さまざまな合併症(心筋梗塞や脳梗塞など)を引き起こすため、「糖尿病かな」と思われた方は、内科医師や糖尿病内科医師にご相談ください。