子宮頸がん予防にはHPVワクチンとがん検診

奈良県医師会 本木隆規

平成9(1997)年4月2日(27歳)から平成21(2009)年4月1日(15歳)に生まれた女性のうち、子宮頸(けい)がんなどの原因を予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの公費での接種を希望される方は、令和7(2025)年3月31日までに1回目を受ける必要があります。

公費で接種できるHPVワクチンにはサーバリックス(2価)、ガーダシル(4価)、シルガード9(9価)の3種類あります。子宮頸がんなどの予防効果を高めるために、約6ヶ月で2回、または3回接種します。どのワクチンを接種できるかは、接種を希望する医療機関にご相談ください。

公費の補助がない場合の接種費用は、サーバリックス(2価)とガーダシル(4価)は3回接種で4~5万円、シルガード9(9価)は2回接種で5~7万円、3回接種で8~10万円です。

HPVには200種類以上の型(タイプ)があり、子宮頸がんの原因と分かっているのは少なくとも15種類です。

子宮頸がんの原因となるHPVの型の感染を、2価・4価ワクチンで60~70%予防でき、9価ワクチンで80~90%予防できることが日本の研究で分かっています。

子宮頸がんの発生リスクは、2006年に4価ワクチンが開始されたスウェーデンで17~30歳に接種した場合、50%以上減ったという結果でした。16歳以下では2価・4価ワクチンの欧州3カ国で約87%の減少効果がありました。2007年から行われた9価ワクチンの欧州の臨床試験で約98%の減少効果がありました。

副反応はどうでしょうか。接種部位の痛みが90%、接種部位の腫(は)れや赤みが40%と高い頻度で見られます。発熱は3~5%程度です。

そのほかに、ワクチン接種後に、頭が痛い、身体がだるい、関節や身体が痛む、歩けなくなった、物覚えが悪くなった等といった症状がみられる方がおられます。

日本の調査では、HPVワクチンが上記症状のリスクになっているという結果は得られませんでした。なお、このような課題は新型コロナワクチン接種後の症状でも起きています。

以上をまとめると、HPVワクチンは他のワクチンと比較すると接種時の痛みは少し強めですが、デメリットを上回るメリットは十分あると考えてよいでしょう。

接種後に健康被害が生じた場合には、医療や教育に関する電話相談窓口が奈良県庁に設置されていますのでご活用ください。また、ワクチン接種による健康被害と認められた場合に医療費、医療手当などが給付される「予防接種健康被害救済制度」があります。

しかし、子宮頸がんはワクチンでは防げないHPV感染もあるので、早期発見のため、20歳から子宮頸がん検診を定期的に受診することも大切です。現在は2年に1回、がんができる子宮頸部の細胞を、直接柔らかいヘラやブラシで擦(こす)って採取する「細胞診」が推奨されています。

20~40代に多い子宮頸がんは、ワクチンによるHPV感染予防とがん検診による早期発見の両方とも重要です。

昨年の夏以降のHPVワクチンの供給不足を受けて、接種希望者が無料の接種機会を逃さないようにするために、条件付きで公費接種期間が延長されました。これが最後の公費支援だと思われますので、周囲に今年度(2025年3月31日までに)16~27歳になる(なった)女性がいらしたら、この記事を紹介していただけたら幸いです。