奈良県医師会 前之園晃幸
2025年が始まり、2カ月が過ぎました。今年は約50年前の、日本がかつて隆盛を極めた頃に行われた万博が、再び大阪で開催されます。その一方で、当時日本の発展に寄与し、働き盛りであった約800万人いる団塊世代の人々が「後期高齢者(75歳)」となり、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えることにもなります。
以前より「2025年問題」として述べられているように、医療や福祉等様々な分野に影響を生まれることが予想されていました。
奈良県においても令和4(2022)年の65歳以上人口の割合は、42万3184人(32.4%)と全国平均(29.0%)を上回っており、「要介護」となる高齢者が増加し、認知症の高齢者や高齢単身世帯・夫婦のみ世帯が急速に増えていくことも見込まれており、様々なニーズに対応することが必要とされます。
高齢者の意識調査において「生活する上で望んでいること」について調査したところ、
・「身体が不自由になったときの生活の場を『自宅』と答えた人」が50.8%
・「人生の最期を迎えたい場所を『自宅』と答えた人」が58.8%
という結果もあります。
このような国民の願いを実現するため国を始めとする行政は、早くから「高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域で安心して暮らし続ける」ために、医療や介護など生活支援を提供できる地域での体制づくりを目指してきました。
2005年に高齢者の方々への生活サービスを一体的に提供できるケア体制を構築する「地域包括ケアシステム」という用語が初めて使われ、その構想の一部として、地域住民の介護や医療に関する相談窓口「地域包括支援センター」の創設が打ち出されました。
奈良県でも現在、各地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築を目指し、各市町村のそれぞれの地区(計71カ所)に「地域包括支援センター」が設置されてきました。
「地域包括支援センター」では、以下のごとく大きく分けて4つの業務を行っています。
1.総合・相談支援 | 高齢者の健康や生活全般、介護に関する悩み、相談を幅広く受け付けます。介護認定の申請の方法や、介護保険サービスの利用の説明を行います。また、相談内容に応じて専門スタッフが必要なサービスを選択・紹介してくれます。 |
2.介護要望ケアマネジメント | 「要介護1・2」と認定された方や、今後支援や介護が必要となる可能性のある方に対して、介護を予防するための支援を行います。具体的には、介護予防ケアプランの作成、介護予防サービスの案内、運動サークルや健康教室の案内などです。 |
3.権利擁護 | 安心して地域で生活するために、高齢者の権利に関わる相談を受け付けます。例えば、消費者被害の相談、虐待などの対応、成年後見制度の紹介などです。 |
4.包括的・継続的ケアマネジメント | ケアマネジャーと協議し、適切な指導や支援を導きます。また、さまざまな医療介護関係機関との連携を図ります。 |
具体的に述べると、以下の如き悩みが生じた時に利用すると有用です。
①最近親の物忘れが激しく、認知症かもしれないと思っている
②要介護認定はどうやって受けたらいい?
③介護保険を使って家を改修したい。どうすればいい?
④介護予防のプログラムが受けたいので紹介してほしい
⑤体調が思わしくないが、かかりつけ医がいない。どこへ受診すればいい?
⑥成年後見人制度について教えてほしい
日常の介護や生活における相談事に無料で対応してくれます。
「地域包括支援センター」では、社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーなどの資格を持つ職員が専門性を活かして相談に乗ってくれ、解決法を一緒に考えてくれます。
介護のことで困りごとや不安なことなどがあれば、一人で抱え込まず「地域包括支援センター」で相談するといいでしょう。