奈良県医師会 増田大徳
最近、「健康寿命」という言葉を耳にする機会が増えていると思います。テレビや新聞、インターネットのニュースでよく取り上げられるこの言葉。「健康寿命」と「平均寿命」にはどんな違いがあり、私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか?
今回は、その違いと、私たちができる健康管理について考えてみます。
1.平均寿命とは?
まず、平均寿命について簡単に説明します。平均寿命は、ある年に生まれた人が、どれくらいの年齢まで生きるかの予測を示す統計値です。
日本は世界的に見ても平均寿命が長い国として知られており、男性は約81歳、女性は約87歳です。この長寿は、医療の進歩や生活水準の向上、栄養状態の改善などのおかげで実現しています。
しかし、長生きすることが必ずしも健康で快適な生活を意味するわけではありません。そこで登場するのが「健康寿命」です。
2.健康寿命とは?
健康寿命とは、日常生活に支障をきたさず、自立して元気に生活できる年齢のことを指します。具体的には、病気や障害によって介護が必要になることなく、自分のことが自分でできる状態で過ごせる期間を意味します。
日本の健康寿命は、男性が約72歳、女性が約74歳です。これを見ると、平均寿命と健康寿命の差は約10年程度あることがわかります。つまり、日本人は、平均して10年以上、何らかの病気や障害に悩まされながら生活していることになります。この差を縮めることが、今後の健康管理における重要な課題となります。
3.健康寿命を延ばすためにできること
健康寿命を延ばすためには、普段からの予防と生活習慣の見直しが大切です。私たち一人一人が日々の生活の中でできることを実践し、長期的に健康を維持することが求められます。
➀ 食事の改善
健康な体を維持するためには、バランスの取れた食事が欠かせません。特に、野菜や果物を豊富に摂(と)ること、塩分や脂肪の摂取を控えることが大切です。また、過食を避け、規則正しい食事を心がけることもポイントです。
➁ 定期的な運動
運動は体力を維持するためだけでなく、心身の健康を保つためにも重要です。週に数回、ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い運動をすることで、筋力や柔軟性が保たれ、血行が良くなります。また、運動は精神的なストレスを減少させる効果もあります。
➂ 禁煙と節酒
喫煙や過度な飲酒は、健康寿命を縮める大きな原因となります。タバコは肺がんや心疾患、脳卒中を引き起こすリスクを高め、アルコールも肝臓や脳に悪影響を与えます。禁煙や節酒は、健康寿命を延ばすための大きな一歩です。
➃ 睡眠の質を改善
睡眠不足や不規則な生活は、健康に悪影響を及ぼします。十分な睡眠を取ることで、体の回復や免疫力の向上が期待できます。理想的な睡眠時間は7~8時間程度とされていますが、質の良い睡眠を心がけることも大切です。
➄ ストレス管理と社会的つながり
心の健康も、健康寿命に大きな影響を与えます。過度なストレスや孤独感は、体調を崩す原因となります。趣味や友人との交流を楽しみ、リラックスできる時間を作ることが心身の健康維持に役立ちます。
4.高齢者支援と地域の役割
健康寿命を延ばすためには、個人の努力だけでなく、地域社会や行政の支援も重要です。特に高齢者にとっては、介護や医療のサポートが不可欠です。地域でのコミュニティ活動や高齢者のための健康サポートが充実することで、健康寿命を延ばすための助けとなります。
例えば、地域のウォーキングイベントや運動教室、栄養相談などの取り組みは、住民同士のつながりを深め、健康維持の助けになります。また、訪問介護や医療サービスの充実が、高齢者の自立した生活を支えます。
5.まとめ
平均寿命が延びる一方で、健康寿命は必ずしも同じように伸びているわけではありません。健康寿命を延ばすためには、日々の生活習慣の改善が大切です。食事、運動、禁煙、睡眠、ストレス管理といった基本的な生活習慣を見直し、できることから実践していくことが、健康な長寿を実現する鍵となります。
あなたの健康は、あなたの手の中にあります。今から少しずつでも、健康寿命を延ばすための行動を始めてみませんか?