産業医

産業医ってご存じですか

医師会も認定に一役

奈良県医師会 笠原 仁     

(笠原内科医院・橿原市)

働く人の健康を考察する学問は、産業医学、産業保健学、労働衛生学などと呼ばれています。

産業医は「大きな会社の社医」というイメージかと思いますが、今は法律で50人以上の企業に選任することが義務付けられています。産業医は医師なら誰でもなれるわけではなく、その多くが、日本医師会が行っている「産業医学基礎研修」を修了した先生です。

私は以前、専属産業医として常勤社員の産業医として企業に勤務したことがあり、また開業した今も、様々な業種の会社で産業医として勤めさせていただいています。

この仕事の醍醐味(だいごみ)は、なんといってもお医者さん以外とのつながりを持てることです。したがって、誤解が生じるかもしれないのを承知であえて言えば、まずは社長さんやその周りの方々の機嫌を取らないといけません。

かといって、社長さんの言いなりでは困るわけで、耳に痛いことも言わなくてはなりません。そういうことを言っても聞いてもらえるような関係になること、これが産業医として仕事をしていく中で、一番難しくもあり、楽しくもあるところです。ただ一度、懐に入ってしまえば社長さんや社員さんとのコミュニケーションもスムーズにとれるようになり、かなり仕事はやりやすくなります。ご自分の健康のこと、同僚の様子が心配だ、家族にこんな症状がある者がいるんだけど・・・と、いろいろな相談がくるようになります。

今、「健康経営」ということが言われていますが、健康で元気な社員があってこその健康で元気な会社。30年前にそうあるべきと思っていたことが、やっと行政の後押しもいただけ、そのような考えを持たれる企業も増えてきました。その中で産業医と契約される企業も増えてきていると思います。

もし、ご自分の会社に産業医がいらっしゃるようなら、職場巡視で産業医を見かけたときに声をかけてみてはいかがでしょうか。

産業医は、自分の目と耳で職場の状態を把握、感じ取り、企業にアドバイスしています。職場巡視で目は使いますが、耳はみなさんからお話をいただかないと活かすことができません。「健診結果の説明を聞きたい」ということからでも構いません。あるいは、「こんにちは!」の挨拶だけでもいいと思います。せっかくですので、ぜひ活用していただければと思います。それがひいては、会社の環境改善につながっていくことも多々あります。

産業医の先生に相談してよかった、うちの会社に産業医がいてよかった、そんなことを一人でも多くの方に思ってもらいたくて、産業医という仕事をほんの少しですが、紹介させていただきました。