ポリファーマシーにご注意を!~お薬との正しい付き合い方~

奈良県医師会 東 光久

(奈良県総合医療センター・総合診療科)

「ポリファーマシー」とは、複数の薬を同時に服用することで、副作用などの問題が生じる状態を指し、一般的にその数は5〜6種類以上とされています。高齢になると、生活習慣病や慢性疾患などさまざまな病気にかかるリスクが高まり、それに伴って服用する薬の種類も増えがちです。

しかし、薬が増えれば増えるほど、体に思わぬ影響を及ぼすこともあります。日本では高齢化が進む中で、ポリファーマシーは重要な健康課題の一つとなっています。

 

● ポリファーマシーが引き起こす問題

多くの薬を服用することで、以下のような問題が起こる可能性があります。

  1. 副作用の増加

薬にはそれぞれ効能がある一方で、副作用もあります。特に複数の薬を同時に服用すると、薬同士の相互作用によって思わぬ副作用が発生することがあります。

例えば、高血圧の薬と一部の鎮痛剤を併用すると、腎機能が低下する可能性があります。また、眠気を引き起こす薬が増えると、転倒のリスクが高まります。

  1. 飲み間違いのリスク

薬の種類が増えると、飲み忘れや誤った服用が起こりやすくなります。特に高齢者の場合、視力や記憶力の低下が影響し、指示通りに服用することが難しくなることがあります。

また、服用時間がバラバラな薬が多いと管理が大変になり、うっかり飲み忘れたり、同じ薬を重複して飲んでしまったりすることもあります。

  1. 医療費の増加

必要以上に薬を処方されることで、医療費が増加するという問題もあります。日本の医療制度では、国民皆保険のもとで医療費の一部を自己負担する仕組みになっていますが、薬の数が増えれば、その分の自己負担額も増えます。

特に、長期間にわたる服薬が必要な慢性疾患の患者にとって、これは大きな負担となります。

 

● ポリファーマシーを防ぐためにできること

ポリファーマシーを防ぎ、安心して薬を服用するためには、以下のような対策が重要です。

  1. 「お薬手帳」を活用する

お薬手帳は、自分がどの薬をどのくらい服用しているかを記録するための大切なツールです。病院や薬局に行くときは必ず持参し、医師や薬剤師に現在服用している薬を正しく伝えましょう。これにより不要な重複処方を防ぎ、相互作用のリスクを減らすことができます。

  1. かかりつけ医・かかりつけ薬剤師を持つ

信頼できる医師や薬剤師に、継続的に自分の健康状態や薬の情報を管理してもらうことも大切です。特に複数の診療科を受診している場合、各診療科で異なる薬が処方されることがあるため、かかりつけの医師や薬剤師が全体を把握し、適切なアドバイスをしてくれると安心です。

  1. 自己判断で薬をやめない

体調が良くなったからといって、自己判断で薬をやめたり、服用量を減らしたりすることは危険です。

薬の中には、急にやめると体に悪影響を及ぼすものもあります。服用を続けるべきかどうか迷った場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

  1. 定期的に服薬を見直す

長期間にわたって薬を飲み続けていると、本当に必要な薬なのか分からなくなることがあります。特に高齢者の場合、昔からの習慣で飲み続けている薬が、実は不要になっていることもあります。定期的に医師と相談し、現在の健康状態に合った薬を処方してもらうことが大切です。

 

● まとめ

薬は正しく使えば、病気の治療や健康の維持に役立つ重要なものです。しかし、必要以上に多くの薬を服用することで、かえって健康に悪影響を及ぼすことがあります。

ポリファーマシーを防ぐためには、自分自身で服薬状況を把握し、医師や薬剤師と適切に相談することが重要です。お薬手帳の活用や、かかりつけ医・薬剤師とのコミュニケーションを大切にしながら、より安全で健康的な生活を送りましょう。