奈良県医師会 山本忠彦
(山本医院・葛城市)
お酒は古くから私たちの暮らしに根づいており、祝い事や人付き合いの場では欠かせない存在です。しかし一方で、飲み方を誤ると健康に大きな影響を及ぼすことが、近年の研究で明らかになってきました。
「適量なら体に良い」「少量なら問題ない」という研究結果も示されているアルコールですが、「たとえ少量であっても健康に害を及ぼす可能性がある」との報告もあります。
たとえば、肝臓への影響です。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少のダメージでは自覚症状が出ません。しかし、アルコールを日常的に摂取していると、たとえ少量でも徐々に肝細胞が傷つき、脂肪肝や肝炎、さらには肝硬変や肝がんへと進行するリスクがあります。
また、アルコールは複数のがんの発症リスクを高めることが明らかになっています。口腔がん、咽頭がん、食道がん、大腸がん、乳がんなど、アルコールの摂取と明確な関連が認められているがんは少なくありません。
さらに飲酒は、睡眠障害、うつ症状、肥満、糖尿病、認知症リスクの増加など、多くの疾患に関与しています。家族歴や持病がある方は、特に慎重な対応が求められます。
2023年にWHO(世界保健機関)は「安全な飲酒量は存在しない」との見解を示しており、健康の観点からは“飲まない”ことが最善という見方もあります。
とはいえ、「そう言われても、飲みたくなる時がある」「付き合いやストレス解消のために少しだけ…」という方も多いでしょう。大切なのは、自分の飲酒習慣を見直し、コントロールする意識を持つことです。
たとえば、次のような工夫が役立ちます。
- 飲酒の「目的」を考える:本当にお酒が必要ですか? 気分転換やリラックスのためなら、ノンアルコール飲料やお風呂、音楽など代替手段もあります。
- 飲まない日をつくる:「休肝日」を意識して取り入れることで、肝臓への負担を減らすことができます。
- 量を決める:だらだらと飲むのではなく、「今日はこれだけ」と決めて飲む習慣をつけましょう。
- 周囲に理解を求める:付き合いの席でも「今日は控えている」と伝えることは、恥ずかしいことではありません。
私たちは、すべての人に「禁酒」を強制するのではありません。しかし、健康を大切にするために「お酒とのつきあい方」を今一度考えてみていただきたいのです。将来の自分のため、そして大切な人たちのために、「飲まない選択肢」を選ぶ勇気もまた、健康への第一歩です。



