奈良県医師会 阪口仁一
(医療法人 阪口眼科・五條市)
「緑内障」は、厚生労働省の調査によると、我が国の失明原因の第1位を占めています。日本での大規模な住民検診(通称:多治見スタディ)で、岐阜県多治見市に在住する40歳以上の約4,000人に対して緑内障検診を行ったところ、「20人に1人」が緑内障であると分かりました。加齢や近視と関連すると言われており、高齢社会や若者の近視化という世の中の動きを見ると、今後もさらに重要性が増していくと思われます。
■緑内障の仕組み
緑内障は眼の神経が萎縮(いしゅく)して視野が欠けていく病気です。いくつかのタイプに分類されますが、大まかに分けて、急激に進行するものと、慢性に進行するものがあります。
- 急性のタイプでは、劇的で著しい眼圧上昇(急性緑内障発作)を起こすことがあります。急に片目がぼやけて見え、眼痛、頭痛、吐(は)き気などの激しい自覚症状が出現します。すぐに治療しないと、数日で失明してしまう危険性があります。
- 慢性のタイプでは、視野が「欠ける」というよりは「部分的にぼやける」ように感じられます(下図参照)。ゆっくり進行するため、かなり悪くなるまで発見されにくく、無治療のまま過ごしている方がたくさんおられます。
緑内障と聞くと、「『眼圧(眼の硬さ)』が高い病気」という印象がありますが、先ほどの住民検診で緑内障が見つかった方のうち70%は、眼圧が正常範囲内の「正常眼圧緑内障」でした。緑内障の発症、進行には、眼圧以外にもさまざまな要素(加齢、近視や遠視、人種、血圧、糖尿病の合併など)が影響すると報告されています。
■緑内障の診察
緑内障は、初期には自覚症状がほとんどなく、患者さんご自身で緑内障の発症や進行に気付くことは難しいです。そのため、定期的な通院によってご自身の眼の状態を知っていただくことが大切です。診察では、眼圧や視野に加え、眼底の写真を撮ったり、神経の厚みを測る検査が行われます。
緑内障になっているかどうかと同じくらい大切なのが、緑内障が悪化していないか、ということです。そのためには、定期的な診察を受けて、視野や視神経の形態の変化をとらえることが必要です。また、緑内障の悪化と関連して視神経から小さな出血が生じることがあります。この出血は2-3ヶ月程度で消えてしまうため、見逃さないためにはそれぐらいの間に1回の診察を受けることが望ましい、という意見もあります。
■緑内障の治療
現在の医学では、残念ながら、緑内障を治す(一度狭くなった視野を復活させる、眼の神経を再生する)ことは出来ません。また、どんなに頑張って治療しても、進行を止められない方もおられます。
しかし、「緑内障=失明」ということはなく、適切な診断・治療を行えば、視野障害の発症や進行を緩やかにできる可能性が高まります。
現在、唯一医学的根拠のある治療戦略は、眼圧を下げることです。そのための治療には、
①薬物療法
②レーザー治療
③手術
があります。すべての緑内障に対して同じ治療効果があるのではなく、緑内障のタイプやそれぞれの方に適した治療方針を決定することがとても重要です。
■まとめ
一度失ってしまった視力や視野は、薬や手術でも回復することはありません。そのため、早期発見と適切な治療によって、視野障害や視力障害の進行をできるだけ抑えることが大切です。気になることがあれば、お近くの眼科を受診ください。




