認知症の予防

奈良県医師会 松岡 究

(まつおかクリニック・橿原市)

「最近、物忘れが増えた気がするけれど、もしかして認知症かな」

そんな不安を感じたことがある方もおられるかもしれません。

「鍵をどこに置いたかな。・・・・ああ、ここに置いたんだった」と思い出せるような物忘れは、認知症というよりも、加齢によって誰にでも起こり得る自然な現象です。

一方で、「鍵をしまったこと自体を覚えていない」と鍵の場所を忘れてしまい、紛失してしまうことが何度もある場合には、認知症の可能性があります。

今回は、認知症を予防するために、私たちが日々の暮らしの中でできることをご紹介します。

 

認知症とは、脳の働きが病気によって低下し、生活に支障をきたした状態です。記憶力以外にも注意力や、計画を立てたり問題を解決したりする能力、さらには他人の気持ちを理解する能力などが低下することがあります。

そのために、家事や買い物、服薬の管理のような日常生活に影響を及ぼすようになった場合には、認知症の可能性があります。

 

認知症の予防に関して、2024年の医学誌『LANCET』に掲載された報告では、以下の14項目の認知症のリスク因子が挙げられています。

これらを改善することで、認知症の約45%を予防、または発症を遅らせる可能性があるとされています(Livingston G et al. Lancet. 2024)。

 

– 高血圧

– 高LDLコレステロール

– 糖尿病

– 肥満

– 喫煙

– 過度の飲酒

– 運動不足

– 視力低下

– 頭部外傷

– うつ病

– 難聴

– 社会的孤立

– 大気汚染

– 教育機会の不足

 

たとえば、定期的に健康診断を受けて、血圧や血糖値、コレステロールの数値を確認し、必要に応じて食事や運動習慣を見直すことは、脳の健康を守るうえで非常に効果的です。また、たばこやお酒の量を見直すことも、脳への負担を減らす大切な習慣です。

視力や聴力の低下に気づいたときには、眼鏡や補聴器などを活用して、人との会話やふれあいの時間を増やすことが脳への良い刺激になります。地域の活動や趣味の集まりに参加するのもおすすめです。

そして、気分の落ち込みが続いたり、眠れない日が続いたりするときは、無理をせず、早めに医療機関や相談窓口に話してみましょう。心の健康を整えることも、認知症予防には欠かせません。

 

一方で、認知症と診断された場合でも、進行を抑える薬や生活をサポートする体制が整ってきています。特にアルツハイマー病では、いくつかのお薬が適応となっており、症状の進行を遅らせる効果が期待されています。

 

「最近、少し物忘れが増えた気がする」「家族の様子が以前と違うようだ」と感じたら、遠慮なく医療機関に相談してください。一人で抱え込まないことが大切です。