奈良県医師会 井戸芳樹
(新大宮診療所・奈良市)
▶毎日のリズムが体の調子をつくる
私たちの体には、「体内時計」と呼ばれるリズムがあります。およそ24時間周期で、睡眠や体温、ホルモン分泌(ぶんぴつ)、血圧、代謝などをコントロールしています。
この体内時計がうまく働くことで、昼は活動的に、夜は休息に向かうという自然なリズムが保たれます。逆に生活のリズムが乱れると、体内時計がずれてさまざまな不調を引き起こします。
▶体内時計の乱れがもたらす影響
夜更かしや不規則な食事、夜勤などで生活リズムが乱れると、体内時計がズレてしまいます。その結果、睡眠の質が低下したり、朝すっきり起きられなくなったりします。
さらに、ホルモンの分泌や代謝のリズムも狂い、肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが高まることが分かっています。
また、免疫や精神のバランスにも関係しており、体内時計の乱れは感染症にかかりやすくなったり、気分の落ち込みや集中力の低下にもつながります。
いわば、体内時計は全身の健康を支える「司令塔」のような存在なのです。
▶体内時計を整える生活習慣
体内時計を整えるためには、毎日の生活の中で「リセットのきっかけ」をつくることが大切です。その代表が「朝の光」です。起床後にカーテンを開けて朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ活動モードに切り替わります。
また、朝食をとることも重要です。食事は体の「末梢(まっしょう)の時計」を動かすスイッチになります。特にタンパク質や炭水化物をバランスよくとることで、脳と体のリズムが一致しやすくなります。
一方で、夜遅くの食事や強い光(スマートフォンやテレビなど)は、体に「まだ昼だ」と勘違いさせ、睡眠の質を下げます。
就寝の1時間前には画面を見るのを控え、照明を少し暗くするとよいでしょう。
▶毎日のリズムが未来の健康を守る
体内時計は年齢とともに変化しますが、どの年代でも「規則正しい生活」が基本です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に食事をし、同じ時間に眠る。それだけでも体のリズムは安定します。
忙しい日々の中でも自分なりのリズムを大切にすることが、心と体の健康を守る第一歩です。体内時計を整えることは、薬に頼らない健康法のひとつといえるでしょう。



