自己免疫疾患編 ⑤「ベーチェット病」はどんな病気?

奈良県医師会 赤井靖宏

「ベーチェット病」は、トルコ・イスタンブール大学皮膚科のベーチェット教授が最初に報告しました。この病気は、地中海から東アジアにおよぶシルクロード沿いで発症が多いため、別名「シルクロード病」とも呼ばれます。わが国もベーチェット病の発症が多い国のひとつです。

自己免疫疾患の多くは男性より女性に起こりやすいですが、ベーチェット病には男女で起こり方に差がありません。ベーチェット病の原因はよくわかっていませんが、個々人が持つ遺伝的・体質的な要因に環境要因(感染や喫煙など)が加わって病気が起こると考えられています。
ベーチェット病は、口の中、眼、皮膚や外陰部などに炎症を起こす病気ですが、時には、腸管、血管や神経(脳など)に炎症を起こすこともあります。ベーチェット病の主な症状について以下に述べます。
【口腔内病変】ベーチェット病で最も多い病変は口腔(こうくう)内にできる「アフタ性潰瘍(かいよう)」です。アフタ性潰瘍は、みなさんがよく経験される「口内炎」と似ているのですが、ベーチェット病によるアフタ性潰瘍は普通の口内炎より大きく、痛みが強く、一度に複数個できることが特徴です。

また、ベーチェット病では口の中の潰瘍が何度も繰り返し生じます。
【眼病変】眼には「ブドウ膜炎」と呼ばれる炎症が起こります。ブドウ膜炎は眼を包む膜に起こる炎症で眼の痛みや充血が診断のきっかけになります。ブドウ膜炎を放置すると炎症が広がり、視力が低下することがあり、時に失明します。
【皮膚病変】主に3つの皮膚病変があります。赤く盛り上がって痛みを伴う「結節性紅斑(こうはん)様皮疹」は下肢(かし)によく見られます。ニキビと似た「毛嚢(もうのう)炎様皮疹」は胸や背中にできやすい皮疹です。

また、皮膚に近い静脈に血の塊(かたまり:血栓)ができて炎症が起こる病変が「血栓性静脈炎」です。血栓性静脈炎が起こると、血管に沿って腫(は)れあがるような症状が起こります。
【外陰部病変】外陰部に潰瘍ができ、痛みを伴います。

ベーチェット病の診断には、患者さんが訴える症状をよく聞いて診察を入念に行うことが最も重要です。最近はスマホなどで病変の写真を撮っていただく場合もありますが、そのような記録はベーチェット病の診断に大変有用です。血液検査や尿検査ではベーチェット病に特異的な検査はなく、一般的に体に炎症が起こっていることを示す白血球の増加や炎症反応の上昇がみられることがあります。

また、ベーチェット病では、HLAという白血球の表面にある蛋白(たんぱく)質の特徴が病気の発症に関連していることが知られています。このため、ベーチェット病が疑わしい場合には特定のHLA型を検査して診断の参考にします。
ベーチェット病の治療は、病変の重さによって異なります。軽い症状には、塗り薬や消炎鎮痛薬が使われます。病変がひどい場合には、ステロイドや免疫抑制薬が使われます。

最近は、「生物学的製剤」と呼ばれるお薬がベーチェット病にも使えるようになりました。重要なことは、必要な場合にはできるだけ速やかにこれらのお薬を開始することです。早くお薬を開始することで、後遺症なく病気をコントロールすることができます。

前述の様な症状が気になる方は、ぜひかかりつけの先生にご相談をお願いいたします。