「認知症リスクをめまい対策で減らそう」 【第一話】めまいは原因不明のままでは治らない

奈良県医師会 北原 糺

(奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 教授)

認知症リスクは原因不明の部分が60%を占めますが、残りの40%は自分が気を付けていれば予防対策をとれることがわかってきました。その努力で何とかなる40%の中で、「難聴対策」が6%、「活動性低下」も6%を占めます。さらに難聴も活動性低下も社会的孤立や鬱(うつ)を併発すれば、認知症リスクは倍になると試算されています。つまり、難聴対策とめまい対策は、この超高齢社会において、楽しく幸せに生きていくための健康長寿にとって非常に重要です。

私たちの4人に1人が、めまいを経験するとされています。まさに、国民病といっても過言ではないほど、悩まれている人が多い症状です。私がセンター長を務める、奈良県立医科大学附属病院内の外来「めまいセンター」には、めまいに悩む全国の患者さんが多数訪れます。近畿圏だけではなく、北海道や沖縄などの遠方からいらっしゃる患者さんもいます。これは、めまいに苦しみ、改善せずに困っている人が、それだけたくさんいらっしゃることの反映にほかなりません。

めまいセンターで相談を受けるのは、次のような訴えです。

「どこで診てもらってもめまいの原因がわからない」

「検査してもどこも悪くないと言われてしまう」

「良くなったり悪くなったりを繰り返している」

「長年めまいに悩み続けて半ば諦めている」

めまいという症状は、病院で検査を受けて調べてもらっても、「原因不明」や「異常なし」と診断されることがよくあります。よくなったり、悪くなったりを繰り返すケースも多いため、患者さんを悩ませます。診断がつきにくく、それだけに適切な治療がなされないのです。「原因不明」や「異常なし」といわれてしまった人、症状が出たり出なかったりする人の中には、なんとか良くしようとして、「ドクターショッピング」(複数の病院を受診すること)を続けている人もいらっしゃるでしょう。

めまいの正体を突き止めることで、治療方針をきちんと定められます。しかし、なかには、すでに診断名はついていて、それに対する治療を行っているのに、なかなか良くならないという人もいらっしゃるでしょう。私たちは、そうした患者さんに対しても、最新のエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を実践しています。つまり、「原因のわからない」多数の患者さんと、「なかなか治らない」多くの患者さんのために正しい診断と治療方針を明らかにして、それに従って治療を進めていく。これが、私たちめまいセンターの責務なのです。

「原因不明」や「異常なし」と判定されてしまうめまいの原因を突き止め、正しい診断を下すために、めまいセンターは設立されました。センターでは短期間の入院検査によって、身体のどの部分に異常があるからめまい平衡障害が起こるのか、しっかり診断して適切な治療法を提案します。これまでにおよそ5万人もの患者さんを、センターで診てきました。2014年の開設から2025年までのデータを集計分析した結果、これまで「原因不明」とされていた症状に対し、当センターが原因を突き止めた解明率は、97%。これは素晴らしい数字だと自負しております。めまいは、薬を飲めばパッと治るような病気ではありません。めまい止めは、対症療法(病気の原因ではなく、現れた症状を治す方法)にすぎず、その場しのぎにしかなりません。だからこそ、ご自身のめまいの原因について、よく知ることが重要です。

第二話(8月20日付)ではめまいの中で最も多い原因である、BPPVという病気について、わかりやすく解説します。

 

「お知らせ」

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室では、10月31日(土曜日)、奈良県コンベンションセンター(奈良市三条大路)において、市民講座『認知症リスクから日常生活を守るために』を主催することとなりました。

一人でも多くの県民・市民の方にご参集いただくため、参加費を無料として、フリーアナウンサーの中井美穂さんを総合司会に迎え、専門医師(北原・内田)によりめまいと難聴についてわかりやすい解説と、対処法についてのアドバイスをさせていただきます。