「認知症リスクをめまい対策で減らそう」【第二話】めまいを引き起こすのはどんな病気か

奈良県医師会 北原 糺

(奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 教授) 

認知症リスクは原因不明の部分が60%を占めますが、残りの40%は自分が気を付けていれば予防対策をとれることがわかってきました。その努力で何とかなる40%の中で、「難聴対策」が6%、「活動性低下」も6%を占めます。さらに難聴も活動性低下も社会的孤立や鬱(うつ)を併発すれば、認知症リスクは倍になると試算されています。つまり、難聴対策とめまい対策は、この超高齢社会において、楽しく幸せに生きていくための健康長寿にとって非常に重要です。

第二話では、「めまいを引き起こす主な原因疾患」についてお話しします。最も頻度が高いのが、「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。

BPPVは、内耳の耳石(じせき)器(前庭〈ぜんてい〉)から耳石(炭酸カルシウムからできた小さな粒)が三半規管にこぼれ落ちることによって起こります。前庭には卵形嚢という水平な袋状の器官があります。私たちが立っているとき、卵形嚢(らんけいのう)は地面に対して水平の状態になっています。この皿の上の耳石は、体の動きによって皿が傾いても、通常は石が皿にくっついているため、剥(は)がれません。ところが、何らかの原因で、皿についた耳石が剥がれるようになります。しかし、耳石が単に剥がれただけでは、めまいは起こりません。

耳石によるめまいは、次の3つの順序を経て、はじめて発症します。

① 耳石が剥がれる

② 耳石がこぼれる

③ 耳石が動く

まず、耳石は様々な原因によって剥がれます。代表的な要因としては、加齢や女性ホルモンの減少、事故などで頭をぶつけた経験、内耳の病気、などが挙げられます。しかし、石が剥がれただけでは、めまいは起こりません。立っている状態の場合、剥がれた石は、地面に対して水平になっている卵形嚢の皿の上に留まっているためです。

この耳石が皿からこぼれ落ちたとき、めまいが起こります。最もこぼれやすい体勢は、「頭を低くして寝ること」です。横になることで水平だった皿が、地面に対して垂直になります。すると、剥がれている耳石が三半規管の中にこぼれ落ちるのです。

しかし、三半規管にこぼれ落ちても、めまいが起こるわけではありません。

寝た状態から起き上がると、頭が大きく動きます。このとき、三半規管の中で耳石が大きく動きます。このとき、はじめてめまいが起こるのです。「朝目覚めた際、ベッド(床)から起き上がった瞬間に耳石が動き、めまいが起こる」というのが、BPPVによるめまいの最も典型的なパターンといえます。

もちろん、起床時以外でも、棚の上の物を取ろうとしたときなど、頭が大きく動くシチュエーションと頻繁に遭遇します。すると、家事を行っている間、頻繁にめまいに襲われることになるのです。一方、同じように耳石がはがれていても、じっと頭を動かさない人は、めまいが全く起こらないケースもあります。

当めまいセンターでは、「原因不明」とされるめまいのうち、半数がBPPVであることを突き止めました。さらに、検査で「異常なし」とされてしまった人たちの中にも、BPPVの患者さんが多く存在するのは、ほぼ間違いないでしょう。いったんはがれた耳石は、数週間のうちに、代謝によって消失します。消えたあとにいくら検査しても、なんの異常も発見できません。また、剥がれる耳石が非常に微量であれば、様々な検査もかいくぐってしまうでしょう。このように、BPPVは思った以上に多い病気と言えます。

第三話(9月3日付)では、めまいの中で最も多い原因である、BPPVの治療について、わかりやすく解説します。

 

「お知らせ」

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室では、10月31日(土曜日)、奈良県コンベンションセンター(奈良市三条大路)において、市民講座『認知症リスクから日常生活を守るために』を主催することとなりました。

一人でも多くの県民・市民の方にご参集いただくため、参加費を無料として、フリーアナウンサーの中井美穂さんを総合司会に迎え、専門医師(北原・内田)によりめまいと難聴についてわかりやすい解説と、対処法についてのアドバイスをさせていただきま