奈良県医師会 勝井 建彦
高齢者社会となり老人が増多し、それに伴い骨粗鬆症の患者さんが増加の一途をたどり、現在1200万人いると報告されています。
骨粗鬆症とは、骨が粗くなり、スカスカになった状態の事を言います。65歳以上の女性で最近、背骨が曲がり猫背になってきたとか、身長が低くなってきたような人は、まずこの病気を疑ってください。
骨粗鬆症になる原因は、新しく骨を造る細胞(骨芽細胞:こつがさいぼう)と骨を壊す細胞(破骨細胞:はこつさいぼう)のバランスが悪くなり、骨芽細胞が減って破骨細胞が増えた状態になり発病します。これには女性ホルモンが大いに関係し、この病気は女性に多く、全体の約8割にみられます。また、カルシウムの摂取不足や運動不足、副腎皮質ホルモン剤の長期服用なども要因の一つです。
症状としては、腰周辺の鈍痛、背骨の変形、骨折が起りやすくなる等の事があります。骨折の起りやすい部位は、腰骨、上腕部の付け根、手首の骨や大腿部(だいたいぶ)の付け根に多くみられますが、特に大腿骨の付け根(大腿骨頸部)が折れると手術が必要となり、寝たきりの原因になる事があるので注意が必要です。
骨粗鬆症の診断には、まず骨塩定量測定検査(こつえんていりょうそくていけんさ)で骨量を測る事が必要です。そのほか、腰骨のレントゲン撮影や尿検査でも診断がつきます。
では大切な治療について。最近はいろんな研究により、次々と治療剤の開発がされています。内服薬では、破骨細胞を抑えるビスフォスフォネート製剤と呼ばれる薬や、女性ホルモン剤などのほか、カルシウムを増やす作用のあるビタミンD製剤も多く使います。
また最近、骨を造る細胞を増やす注射が発売され、骨粗鬆症の程度の強い患者さんに主に使われています。骨粗鬆症の程度により選択して貰えれば良いと思います。
さらに、薬と併用して、食事療法と運動療法も大切です。食事はカルシウムを多く含む乳製品、大豆や魚介類、緑黄野菜などで、1日約700~800ミリグラムのカルシウム摂取が必要です。また、カルシウムの吸収を良くするビタミンDの豊富な食品(鮭やしいたけ)、ビタミンKの豊富な食品(納豆や小松菜)も良いでしょう。
運動療法としては、日光浴によりビタミンDが増えます。天気のいい日に1日30~50分程度の散歩が有効です。
骨粗鬆症には、以上の薬物、食事、運動療法の3本柱の治療と予防が大切です。特に女性の方々は早めに開始してください。