奈良県医師会 川本 博
結核は過去の病気と思っていませんか。50年前までは死亡原因の上位を占めていました。医療や生活水準の向上により、新たな患者数、死亡者数は共に激減しています。しかし、現在でも毎年2万5,000人の新たな患者が発生し、2,000人の方が亡くなっています(平成20年現在)。結核は現代の病気であり、重大な感染症なのです。
では、どうやってうつるのでしょう? 結核は空気感染する病気です。食器や触れたものから感染することはありません。結核菌の混ざった痰(たん)が、咳(せき)やくしゃみと一緒に空気中に飛び散り、それを周りの人が直接吸い込むことによってうつります。鼻やのどの粘膜に付着すれば感染しません。肺の奥まで吸い込まれて初めて感染するのです。
結核に感染した人の中で実際に発病するのは、約10%の人です。通常は免疫機構(外からの異物の侵入に体が反応し、その害から逃れるために体が備えもったメカニズム)が働いて結核菌の増殖を抑えるため、一生発病しないことが多いのです。ただ、結核菌は殺されたわけではなく、冬眠状態となっています。成人の結核は、感染してから数年~数十年潜んでいたものが、免疫力が弱まったとき(たとえば、加齢、糖尿病、胃の手術など)に発病するケースが多いです。
また、赤ちゃんや子どもの結核では、感染初期に十分な免疫ができにくいため、感染からそのまま発病するケースが多くなります。
結核の初期症状は、咳や痰が続く、微熱が続く、体がだるいなど風邪とよく似ています。咳や痰が2週間以上続いたら、注意が必要です。症状が1ヵ月以上続く人からは、25人に1人の割合で結核患者がみつかっています。
結核は薬で治る病気です。薬をきちんと飲むことで治すことができますが、半年以上の長期間にわたって飲む必要があり、また近年、薬が効きにくい結核菌の出現が問題となってきています。
そこで予防が大切になってきます。赤ちゃんは生後1歳に至るまでの間にBCG接種を受けるようにしましょう(標準的な接種時期の目安は生後5~8ヵ月)。睡眠を十分にとる、適度な運動をする、バランスの取れた食事をするなど、抵抗力を低下させないようにしましょう。
また、早期発見が大切です。これは本人の重症化を防ぐためだけではなく、感染の拡大を防ぐためにも重要です。咳や痰が2週間以上続いたら、結核を疑って早めに医療機関を受診してください。