奈良県医師会 清益 功浩
病気に罹(かか)らない方法が予防接種で、予防接種に使われる医薬品がワクチンです。予防接種で、病気にならないようにしたり、なっても軽くしたり、合併症を防ぐことができます。
さらに、社会全体が仮にすべてある病気の予防接種をしていると、その病気にならないし、流行を防ぐことができます。自分だけでなく、身近な人の病気を防ぐことができるわけです。
ワクチンによって無くなった病気があります。「天然痘(てんねんとう)」です。1980年に世界保健機構は天然痘根絶宣言を出しています。
ワクチンには、病原体そのものを使って弱毒化した生ワクチンと、病原体の一部を使った不活化ワクチンがあります。それぞれ、長所短所があります。生ワクチンは、強い免疫力を誘導するために、1~2回の接種で長期間予防効果があります。しかし、病原体そのものを使うために、麻疹・風疹ワクチンなどのように軽い症状が出たり、改善される前のポリオワクチンのようにワクチンが強毒になってしまい、麻痺を起こすこともありました。
一方、不活化ワクチンは、免疫力の誘導が弱く、複数回、間隔をあけて接種を行う必要があります。また、これまでの3種混合ワクチン(現在は4種混合ワクチン)のように、大人になって百日咳に罹ることもあります。しかし、ワクチンによって病気そのものにはなりません。
ワクチン開発は、医薬品の中でも健康な人に接種するために、高い安全性が求められているので、時間と労力がかかっています。
そんな中で、世界で安全に使われているワクチンが日本で使えず、病気になっている人がいます。日本には義務、推奨されている定期接種と、希望で接種する任意接種があります。任意接種も、病気を防ぐ意味では必要です。さらに、任意接種によっては、自費でのワクチン接種があって、経済的にワクチン接種をできない子供がいます。ワクチンギャップは日本と世界、日本の中にも生じています。やっとHib、肺炎球菌、子宮頸がんワクチンが定期接種になりそうですが、水痘、おたふくかぜはまだ任意接種です。病気は罹らないに越したことはありません。