奈良県医師会 岩井 務
レストレスレッグス症候群が起こるメカニズムはまだはっきり解明されていませんが、現在のところ、①脳内の神経伝達物質「ドパミン」の機能障害、②鉄欠乏、③遺伝的素因の3つの要因が考えられており、脳内においてドパミンが作動する経路に何らかの障害が生じてレストレスレッグス症候群を引き起こしていると考えられます。
また、鉄欠乏性貧血の患者さんの脳内で鉄が不足すると、ドパミンがうまく合成されずにレストレスレッグス症候群を引き起こす場合もあると考えられます。
レストレスレッグス症候群の遺伝研究によれば、患者さんの家系内に同じような疾患の患者さんがいる割合は60%程度と言われています。
レストレスレッグス症候群で原因がはっきり分からない特発性(一次性)以外にも、他の病気や薬などが原因となって起こる二次性のレストレスレッグス症候群があります。二次性の原因疾患として鉄欠乏性貧血、慢性腎不全(特に透析中)、うっ血性心不全、パーキンソン病、脊髄(せきずい)の疾患、ビタミンB欠乏、葉酸欠乏、関節リウマチ、多発神経炎、妊娠中などがあります。二次性の原因薬物として抗精神病薬、抗うつ薬、アレルギーの治療薬である抗ヒスタミン薬、カフェイン、ニコチン、アルコールなどがあります。
レストレスレッグス症候群の治療は、症状が軽い場合には、薬物以外の治療で改善する場合があることから、①鉄分の補給、②要因となる薬物の中止や減量、③カフェインや飲酒、喫煙の制限、④規則的な睡眠、⑤就寝前に短時間歩く、温かいお風呂や冷たいシャワー、マッサージ、ストレッチ、⑥適度な運動、⑦原因となる基礎疾患の治療(月経過多、胃腸障害など)などの非薬物療法は、最初に推奨される治療法です。
また、重い症状が頻繁に見られる場合でも、薬物療法とともに非薬物療法を併用することが望ましいとされています。
もし、患者さん自身がレストレスレッグス症候群を疑ったなら、かかりつけ医の先生から神経内科医や睡眠障害専門医を紹介してもらい受診することお勧めします。