奈良県医師会 村井 孝行
HIV(ここでは〝エイズウイルス〟とします)に感染しているかどうかを調べる検査にはたくさんの方法がありますが、その検査法を概ね二つに大きく分けることができます。
一つは〝エイズウイルス〟が体内に侵入した時に、ヒトの体内で免疫反応が起こって産生される抗体というものを調べる検査法です。少し難しい検査名ですが、この検査法の代表的なものには、簡易検査としてEIA法、CR法などがあり、さらに確実に診断するためのPA法やWB法という検査法もあります。
もう一つの検査法は、体内に侵入した〝エイズウイルス〟そのものが持つ遺伝子を調べるというものです。この検査法も聞き慣れないかもしれませんが、代表的なものにRT―PCR法、DNA―PCR法、NAT法やTMA法などがあります。
また、この両者を同時に検査することができる抗原・抗体同時検査法というものもあります。
エイズは血液の病気ですから、いずれの検査も血液検査で行いますが、ここで注意しなければならないことがあります。それは、検査を受けた時期によっては、検査結果が正確に出ないことがあるということです。つまり、いずれの検査法にも測定限度がありますので、しっかりと抗体が体内でつくられるまで、また、体内に侵入した〝エイズウイルス〟がある程度増殖するまで時間が経たなければ、正確な検査結果が出ないということです。具体的には、抗体を調べる検査では最低3ヵ月、エイズウイルスの遺伝子を調べる検査でも最低約2週間前後は必要と言われています。
厚生労働省エイズ動向委員会による平成24年の年間報告(速報値)によると、新規エイズ患者数、いわゆる「いきなりエイズ」患者数は、前年より55人減少したものの445人と過去3位の報告数に上り、新規HIV感染患者を合わせた全報告数の30・8%にもおよんでいます。言い換えると、新規登録者のうち3人に1人が、知らずのうちに〝エイズウイルス〟に感染しているにも関わらず、無症状のため数年間もの間(平均約8年間と言われています)エイズ検査を受けずじまいにエイズを発症してしまっていることになります。このような不幸な転帰をたどらないために、エイズ検査の浸透と普及を目的にして、毎年「エイズ検査普及週間」が設けられており、今年は6月1日からの1週間がこれに当たりますので、最寄りの保健所等で機会を逃すことなく検査を受けましょう。