奈良県医師会 清益 功浩
百日咳は、名前のとおり、百日(約3ヵ月)も咳が続く病気です。百日咳菌という細菌が気道に感染して起こる病気です。咳に特徴があって、発作的に咳込んだり、咳が続いて息をする時にヒューという音がしたり、咳込みの後にもどしたりするようなら百日咳かもしれません。
3種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳)または4種混合ワクチン(前記3種にポリオを加えたワクチン)を接種している場合は、軽い咳をしたり、咳がひどい程度ですので、風邪との区別がつきにくいです。大人で2週間以上、咳をしている時は、百日咳を疑った方がいいかもしれません。
百日咳にかかると、最初は咳や鼻水程度の風邪症状が出ます。2週間もすると、咳がひどくなり、百日咳特有の咳をします。その後、2週間ひどい時が続いて回復していきます。百日咳の咳は、百日咳毒素によるものですが、1時間以上同じ部屋にいたり、1メートル以内に近づくと咳によって感染する可能性があります。
大人の場合、百日咳の診断が難しく、確定診断するには、培養検査(ばいようけんさ)、百日咳の遺伝子の検査、血液検査を行いますが、2週間以上あけて2回血液検査を行うと診断が可能です。3種混合ワクチンまたは4種混合ワクチンを接種している場合は、1回の血液検査での診断は難しいです。
大人の百日咳も、咳がひどいのでつらいのですが、乳児にかかる百日咳は呼吸困難を起こしますので、重症化します。そのため、生後3ヵ月から4種混合ワクチンを行います。しかし、2回以上接種しないとワクチン効果が低いので、生後4ヵ月までの子どもは感染する危険があります。実際に、生後4ヵ月までの百日咳の子どもへの感染源として、大人や兄弟姉妹、祖父母と言われています。
欧米では、大きな子どもに百日咳に対するワクチンを接種していますが、日本では、2種混合(ジフテリアと破傷風)ワクチンになっています。将来的には、学童以降の百日咳ワクチンが必要と思われます。
小さい子どもをもつ親の咳が続く場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。百日咳は、百日咳に効果のある抗菌薬(こうきんやく)を1週間程度内服することで、感染力がなくなります。