お子様の睡眠を見直してください

奈良県医師会 安東 範明

 先日、ある小学校の先生とお話しする機会がありました。最近の学校での問題点として、朝から元気が無く、時には午前中から居眠りをしてしまう児童がいるようです。そのような子は決まって就寝時間が遅く、日付が変わってから床につく児童もいるようです。日本の子供は夜更かし世界一だと言われています。最近の児童生徒はクラブ活動や習い事、通塾など忙しく、夜遅くなって始めて自分の時間が取れ、自然と就寝時間が遅くなる傾向があるようです。

 人間は生まれつき1日周期の生体リズムがあります。これは概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれ、代表的なものとして睡眠・覚醒のリズムがあります。これは夜には眠って朝には起きる規則正しいリズムです。私たちの脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所には体内時計があり、生体リズムの発信地です。体内時計の1日は、実は24時間ではなく25時間です。そのまま放置すると体内時間は約1時間ずつ後ろにずれていってしまいます。毎日体内時計をリセットしなければなりません。体内時計は目から入った朝の光によってリセットされます。そのため朝の光は「概日リズムの指揮者」と呼ばれます。その他、朝食や午前中の身体活動もリセットに役立っています。このリセットに失敗すると慢性の時差ぼけ状態となり、不眠・食欲不振・全身倦怠(けんたい)感が生じます。学校での集中力は極端に落ちて、元気もなくなってしまうでしょう。

 朝の光は25時間の体内時計を24時間にリセットしてくれます。一方、夜寝る前の光は概日リズムの位相(いそう)を後退させます。すなわち夜中に光を浴びたり見つめたりすると、脳はまだ昼だと勘違いして体内時計をますます後退させてしまうのです。夜のテレビ、パソコン、スマートフォンや携帯メールなどは光を直視していることになりますので避けるべきでしょう。夜はなるべく早く寝て、朝は決まった時間に早起きすることが大切です。

 お子様の健康や生き生きした毎日のために気をつけてあげてください。