奈良県医師会 岩井 務
高齢化に伴い、日本の骨粗しょう症の患者さんは年々増加し、その数は現在約1280万人と推測されています。しかし、そのうち治療を受けている患者さんは20%程度と言われています。骨粗しょう症になっていても患者さんに自覚症状が少ないため、気づかないうちに骨の量が減少し、転倒などの軽い衝撃でも骨折してしまう危険性が高まります。
寝たきりになる原因で最も多いのが高齢になってからの骨折です。平成17年度の東京都社会福祉基礎調査によると、寝たきりになった理由の約24%が「骨折・転倒」でした。
骨粗しょう症と診断されても、お薬の服用と、運動や食事で骨の量の減少を抑えることができます。骨の量の減少が進まないよう早い段階で治療を行い、骨折を予防することが重要で、特に閉経後の女性は、原則として1年に1回は骨の量を測定するとよいでしょう。
骨 粗しょう症は、治療を始めても患者さんが勝手にやめてしまう例が少なくありません。お薬を服用することによって骨の量は改善されても、お薬をやめると骨の量は再び低下して、骨折しやすくなってしまいます。
現在、骨粗しょう症の治療によく使われているお薬は、4種に大別できます。
活性型ビタミンD3製剤は腸管からのカルシウム吸収を促進します。
サーム製剤は骨に対して女性ホルモンと似た働きをし、骨の量を増やします。
カルシトニン製剤は鎮痛効果のある注射薬で、背中や腰の圧迫骨折による痛みを和らげます。
ビスホスホネート(BP)製剤は骨の吸収を強力に抑えるお薬です。長年、骨折抑制効果が高いお薬として、骨粗しょう症の患者さんに幅広く処方されています。しかしBP製剤には大きなメリットがある一方で、服用時の制限があります。それは、食後に服用することの多い他のお薬と異なり、毎日あるいは週に1回、朝起きてすぐの空腹時に服用し、服用後30分は上体を起こしたまま水以外の飲食を控えなければならず、高齢の患者さんにとっては冬の寒い時期は非常に苦痛です。最近になり4週間に1回の服用で済むBP製剤が承認発売され、服用時の煩わしさが解消できることで服用忘れが減り、治療を「コツコツ」続けることできるようになりました。
骨粗しょう症でBP製剤を服用されている患者さんで毎日あるいは週1回の服用が苦痛なら、1度かかりつけ医に相談されることをお勧めします。