奈良県医師会 吉江 貫
1日の正常尿量は概ね1500mlで、膀胱(ぼうこう)にたまる尿量が300mlで尿意を感じます。通常、夜間は腎臓(じんぞう)が尿を作らないように、脳下垂体(のうかすいたい)から抗利尿ホルモンが分泌され、尿を濃くして量を増やさないようにしていています。そのため、1日の排尿回数は昼間5、6回、夜間は0回が正常範囲ということになり、昼間8回以上、夜間1回以上で困っている場合が治療の対象となります。
頻尿の原因は大きく分けて三つあります。①1回にたまる膀胱容量が減少する、②1日の尿量が増える、③睡眠障害です。
①の原因となる疾患は、単に膀胱容量が減少しているものと、排尿障害のため排尿後に膀胱に尿が残り機能的に膀胱容量が減少しているものに分けられます。前者は、膀胱結石(けっせき)、膀胱腫瘍(しゅよう)、膀胱外からの圧迫による子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)、直腸がん、感染症である膀胱炎、前立腺炎(ぜんりつせんえん)、中枢性(ちゅうすうせい)の神経因性膀胱を引きおこす脳卒中、パーキンソン病、認知症、女性に多い骨盤低筋(こつばんていきん)の脆弱化などがあります。後者は尿路閉塞性疾患である前立腺肥大症、尿道の狭窄(きょうさく)、末梢性(まっしょうせい)の神経因性膀胱をおこす子宮癌術後および直腸癌術後などがあります。
②の原因となる疾患はアルコールを含めた水分の多飲のほか、口渇を引きおこす糖尿病、抗利尿ホルモンの合成障害による尿崩症(にょうほうしょう)などがあります。特に夜間の多尿を引きおこす疾患として、うっ血性心不全、腎不全、睡眠時無呼吸症候群が挙げられます。
③の原因となる疾患は、不眠症のほか、内科・精神疾患からくる睡眠障害などがあります。
頻尿の診療では、尿検査のほか尿線の勢いをみる尿流測定、超音波検査による残尿測定、自宅で1日の排尿時刻と1回尿量を記録する排尿日誌がまず行われます。特に排尿日誌は自宅でできることであり、1日の排尿状態が把握できて有用です。
頻尿の治療は、まずそれぞれの原疾患について治療が行われ、排尿障害を合併している場合は一般的に膀胱頚部(けいぶ)および前立腺を弛緩(しかん)させるα-ブロッカー薬の内服が行われ、排尿障害を合併していない場合は膀胱の収縮を抑える抗コリン薬の内服が行われます。