排尿後尿滴下(はいにょうごにょうてきか) -尿漏れ-

奈良県医師会 金子 佳照

 排尿症状には、蓄尿期症状(頻尿:尿が近い)、排尿期症状(出にくい)および排尿後症状があります。尿を出し終わってから、陰茎(いんけい)を下着にしまった後に、尿道内に残った尿が出て「たらーっと」下着を濡らす症状を、排尿後尿滴下といいます。尿をしっかり振り切っても起こります。50歳以上になると、3―4割の方が経験すると報告されています。

 排尿後もなお尿道球部(にょうどうきゅうぶ:尿道の奥のやや広くなった部分)にとどまった尿が、外尿道口(がいにょうどうこう)より漏れる状態で、ごくわずかの尿ですが、時にはズボンまで濡らし、嫌な感じのみでなく、他人にも見え、QOL(生活の質)を強く障害します。

 排尿終了時に、尿道内の尿を残さないように、尿道を取り囲む球部海綿体筋(きゅうぶかいめんたいきん)が収縮しますが、この収縮力が低下するためと考えられています。一般的には、病的なものではありませんが、本人にとっては、嫌なものです。

 下着やズボンに陰茎が圧迫されていたり、あわてて排尿を終了した後にもみられ、工夫が必要です。改善がなければ、排尿後に会陰部(陰のう裏側)や陰茎根部(尿道球部)から外尿道口にかけて、指先で尿道をしごき、尿道球部に残った尿を、押し絞り出すようにします(下図参照)。このようにすると、ほとんどの排尿後の尿の滴(したた)りが改善されます。なかなか症状が改善されなければ、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)、尿道狭窄(きょうさく)などの治療が必要な病気が隠れています。専門医受診をおすすめします。