赤ちゃんの臍(さい)ヘルニア

奈良県医師会 七浦 高志

 出生後、臍(へそ)の緒が乾燥して取れた後、臍の根元が十分に閉鎖されていない場合があります。その閉じていない臍の根元の孔(あな)を通って、泣いたり力(りき)んだりした時に、小腸や大網(だいもう:胃の周囲の脂肪組織)が腹膜と皮膚に覆われ脱出して、臍が膨(ふく)らんだ状態になります。これを「臍ヘルニア」と言います。

 生後1ヵ月ごろに気づかれ、2~3ヵ月は大きくなりますが、その後、次第に縮小し、6ヵ月~1歳までに90%は自然に治ります。

 飛び出した臍を、指で押し戻すと、膨らみはなくなり、臍は平坦になります。この時、皮膚のすぐ下に臍の根元の孔(ヘルニア門と言います)が触れ、この大きさは1㎝前後です。
 ヘルニア門が2㎝以上と大きい場合や、2歳までに自然治癒しない場合は、手術が必要になります。しかし手術の傷は、臍のしわに合わせるので目立ちません。

 しばしばヘルニア門が閉じるまで、孔の上にコインをテープで貼って圧迫したり、絆創膏を臍に貼りつけるなどの行為をされることがあります。しかし、コインで腸の血流が悪くなったり、絆創膏で皮膚がかぶれることがあるので止めましょう。

 また、鼠径(そけい)ヘルニア(股の付け根のヘルニア)の場合、ヘルニア門で腸管が締め付けられて閉塞したり、血流が途絶えて壊死(えし)を起こすことがあり、これをヘルニア嵌頓(かんとん)と言いますが、臍ヘルニアではほとんどありません。

 大部分は自然に治りますので心配いりませんが、臍の膨らみに気づかれたら、かかりつけ医を受診して、ご相談ください。