奈良県医師会 久保 良一
生活習慣の欧米化やアルコール摂取の増加により、むかしは稀な病気であった痛風が増加し、今では一般的な病気となっています。
痛風とは、血液中に尿酸と呼ばれる成分が多くなり、その尿酸が針状の結晶となって関節内にたまり、関節が赤く腫れて痛む発作性の急性の関節炎です。主に足の親指など下肢の関節に起こり、多くは歩けない程の激しい痛みがおこります。性別では、約90%が男性に起こります。そして痛風発作が治ったあとに、その原因である尿酸値を低下させる治療をしないで放置すると、痛風は頻回に再発し、慢性関節炎になり、時には痛風結節と呼ばれる塊(かたまり)が皮膚に現れます。
尿酸値が高い方がすべて痛風になるわけではありませんが、尿酸が高いかは採血で尿酸値を調べて判断します。血液の尿酸値が7.0㎎/dlを超えると高尿酸血症と言われますが、原因は、①体内で尿酸が多く作られる、②尿への尿酸の排出が低下している、③その両方で起こります。
8.0㎎/dl未満までは生活改善指導が、そして尿酸値が8.0㎎/dl以上では、合併症として尿路結石(にょうろけっせき)や腎障害が多くなりますので、病態に応じての治療を考える必要があります。9.0㎎/dl以上や、また痛風を繰り返すときには血液の尿酸値を下げる薬物治療が必要です。
高尿酸血症の方は、高血圧、高脂血症(こうしけっしょう)、糖尿病、肥満などの生活習慣病を高率に合併していることが多く、そこに高尿酸血症が加わると、さらに動脈硬化が進みやすいとも言われていますので、脳や心血管血流障害の病気への注意も必要です。
尿酸値も血糖値やコレステロール値と同様に、生活習慣病の指標であると考え、生活習慣を改善することが最も大切です。
痛風発作や高尿酸血症と言われたら、肥満を解消し、プリン体の多い肉類などの取りすぎに注意し、アルコールをひかえ、水分を十分取りましょう。
また激しい運動は避け、適度な有酸素運動を行い、尿酸値、合併症に応じた治療を医療機関で受けてください。