ロコモティブシンドローム(運動器症候群)

奈良県医師会 鹿子木 英毅

 ロコモティブシンドローム、略して”ロコモ”。一般の方にはまだなじみのない言葉かもしれません。筋肉や骨、関節などの運動器官の障害によって介護が必要な状態、あるいはその一歩手前の状態になってしまうことです。加齢に伴う関節の変形や筋力の衰え、バランス能力の低下、骨粗しょう症などが主な原因です。ロコモは認知症やメタボと並び、健康寿命を短縮し、寝たきりや要介護状態を引き起こす三大要因の一つとされています。高齢者だけの問題ではありません。ロコモとその予備軍は全国で4,700万人に上ると推定されており、初期症状は40代から徐々に出てくると考えられています。以下の7つの質問(ロコチェック)で確認してみましょう。

 

 家の中でつまずいたりすべったりする。

 階段を上がるのに手すりが必要である。

 15分くらい続けて歩くことができない。

 横断歩道を青信号で渡りきれない。

 片足立ちで靴下がはけない。

 2㎏程度の買い物をして持ち帰るのが困難(1リットルの牛乳パック2個程度)。

 家のややきつい仕事が困難(掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど)。

 

  ひとつでも当てはまった場合にはロコモの疑いがあります。ロコモ予防の運動”ロコトレ”を始めましょう。初めての方が行うロコトレとして勧められているのは、開眼片脚立ちとスクワット運動です。転倒しないように必ず何かつかまるものがある場所で行いましょう。短時間でもいいので毎日続けることが大切です。スイミングやウォーキング、ラジオ体操などの運動もロコモ予防には効果的です。ただしこれらの運動も正しい方法で行わないと十分な効果が得られないばかりか、体を害する場合もあります。ロコモかなと思ったらまずはお近くの整形外科医にご相談ください。

 正しい食生活を送ることもロコモ対策に重要です。肥満は腰や膝に大きな負担がかかることで、やせすぎは骨や筋肉の量が減少することで、どちらもロコモの原因となります。バランスの良い食事を心がけ適正な体重を保つことでロコモを予防しましょう。

 

  ※ ロコトレの詳しい説明は下図をご参照ください(出典:ロコモチャレンジ!推進協議会)。