睡眠時無呼吸症候群と心臓病

奈良県医師会 井村 龍麿

 睡眠時無呼吸症候群をご存知でしょうか?

 平成15年にこの病気を患(わずら)っていた新幹線の運転手が運転中に居眠りをしてしまい、緊急停止した事件があり注目されました。ご記憶の方もおられることでしょう。夜間、睡眠中に周期的に何度も呼吸が止まってしまい、そのために熟睡できず、昼間眠気が襲ってくる病気です。

 仰向けに寝ると、重力の影響と筋肉の緩みのために、元々狭くなっているのどの空気の通り道(気道)がさらに狭くなり、完全に閉じてしまって、呼吸ができなくなるのです。
 息が止まってしばらくすると、血液中の酸素濃度が低下して苦しくなるため、睡眠が浅くなり、筋肉が収縮して、気道が開き呼吸が再開します。するとまた睡眠が深くなり、気道が閉塞します。これを睡眠中繰り返すのです。
 この運転手は確か体重が120㎏程もある肥満した方でした。

 この病気は肥満した方に多い病気ですが、痩(や)せていても頚部(けいぶ)の形がもともと細い場合に無呼吸を発症する方もいます。

 この睡眠時無呼吸症候群は昼間の眠気、集中力の低下といった症状をもたらすだけでなく、不整脈、心筋梗塞、脳卒中、難治性の高血圧、大動脈解離といった心臓や血管の病気にかかりやすくなることがわかってきました。一晩中、無呼吸を繰り返し、深い睡眠が得られず、それがストレスとなり、自律神経のバランスを崩してしまうことが原因と考えられています。睡眠は毎日のことですから、強いストレスが毎日続くことになるわけです。

 血液中の酸素の飽和度(ほうわど)を測定するクリップのような機械を一晩装着するだけの外来でもできる簡単な検査で、睡眠時無呼吸症候群がありそうかどうかの判断ができます。陽性の場合には数日間入院して精密検査を行います。治療としては肥満の方は減量する、飲酒量を減らすなどの日常生活の改善、マウスピースの装着、CPAP(シーパップ)と呼ばれるマスクを装着して寝るといったものがあります。

いびきがひどい、ご家族から寝ている時に息が止まっているようだと言われる、夜よく寝ているはずなのに昼間どうしても眠いなどの症状がある方は、一度かかりつけの先生に相談してみてはいかがでしょうか。