奈良県医師会 赤井 靖宏
関節リウマチはいろいろな関節が炎症を起こして腫(は)れたり、痛んだりする病気です。関節リウマチは聞いたことあるけど、「筋肉リウマチ」は聞いたことないなあ、そんな方がほとんどだと思います。
「筋肉リウマチ」の正式な病名は、「リウマチ性多発筋痛症(PMR)」です。「筋肉リウマチ」は、リウマチ専門医の東光久(あずま てるひさ)先生(天理よろづ相談所病院)から教えていただきましたが、リウマチ専門医はPMRをわかりやすく説明するために時々この病名を使っています。
PMRは関節リウマチとは違い、両肩から腕、両股関節のあたりから太ももにかけて痛みやこわばりがおこる炎症性の病気です。「筋肉リウマチ」の名前の通り、関節よりも、筋肉に痛みやこわばりが強い特徴があります。痛みやこわばりは朝方に強く、中には深夜から症状がでて睡眠が妨げられる場合もあります。
PMRは関節リウマチに比べると頻度の少ない病気ですので、しばしば間違った診断名をつけられている場合があります。PMRでは、関節リウマチの検査は陰性であることが多いため、原因不明の関節炎と言われて苦しんでおられる患者さんもおられます。PMRは血液検査で炎症反応が陽性になりますが、関節リウマチのような関節の変形は起こしませんし、全身の臓器に障害を起こすことはまれです。
PMRは少量のステロイドが非常に有効な病気です。ステロイドと聞くと、「副作用が多い怖い薬」とお思いかもしれませんが、PMRには副作用をあまり心配する必要がないくらいの少量ステロイドが使われます。通常、ステロイドを服用してから1週間以内に症状がうそのようになくなります。中には、翌日の朝から体が楽になる患者さんもおられます。ステロイドは、症状を見ながら服用量をゆっくり減らします。
PMRは早期に診断し、ステロイドを開始することが重要です。全身の痛みやこわばりに悩んでおられる方は、近くの医師を受診してみてください。