奈良県医師会 村井 孝行
肝炎といっても色々な原因があり、①ウイルス感染によるもの ②薬剤によるもの ③アルコールによるもの に大きくわかれます。
①はウイルス性肝炎で、現在、ウイルスの種類によりA〜F、TT型の7種類に分類されます。肝炎ウイルス以外でも、EBウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなどに罹(か)った際、ウイルス性肝炎を引き起こすこともあります。また、わが国における肝炎の大多数がウイルス性肝炎で、なかでもB型およびC型肝炎ウイルスの感染者と患者を合わせると、300万人を超えているとも言われ、国内最大級の感染症となっています。
②は、薬や毒物、化学物質などによる薬剤性肝炎です。まれに、漢方薬、民間療法薬や健康食品などでも起こるので注意が必要です。原因となった薬剤にも関係しますが、多くの場合はその薬剤をやめることにより改善し予後も良好です。
③は、アルコール性肝炎です。過度の飲酒だけでなく、毎日少量のアルコールでも長期間にわたり飲み続けると、まず肝臓に中性脂肪が貯まり、腫(は)れ上がってしまいます(脂肪肝)。さらに、飲酒し続けるとアルコール性肝炎へと悪化してしまいます。また、非アルコール性脂肪肝炎というほとんどアルコールを飲まない人にも脂肪肝がおこり、悪化の一途をたどることもあります(NASH=ナッシュと呼ばれています)。
さらに特殊な型の肝炎に、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変など、自己免疫系(本来なら体内に侵入した異物を攻撃するはずの免疫が、自分自身の臓器を攻撃してしまう)が関わったものもあります。
肝臓は非常に強い臓器で「沈黙の臓器」とも言われています。そのため、症状がなかなか出にくいのが特徴でもあります。「体がだるい」といった症状が出てきた時や、血液検査で肝臓の機能(ALT、AST)を調べる数値に異常が出てきた時には、すでに肝臓は相当ダメージを受けて重症化してしまっているかもしれません。にもかかわらず、治療も受けないでさらに放っておくと良くなることなどなく、どんどんと悪くなり肝硬変(肝臓の機能がほとんどなくなってしまった状態)にまで進行してしまい、肝臓がんが出来やすくなってしまいます。
健康診断などで「肝臓機能異常」という結果だった時は、何も症状が無いからといって放置しておかず、すぐにお近くの医療機関を受診し手遅れになる前にきっちりと検査・治療を受けましょう。