線維筋痛症 その1

奈良県医師会 岩井 務

 線維筋痛症は、全身の広い範囲に慢性的(まんせいてき)な痛みを生じる病気で、痛み以外に、疲労感や倦怠感(けんたいかん)、睡眠障害、慢性頭痛、手足のしびれ、こわばり感、腹痛と便通異常、腫れぼったい感じ、不安感や抑うつ感、目や口の乾き、頻尿(ひんにょう)、冷感、耳鳴りなど様々な症状がみられます。また重症の場合は、風が吹く、服を着るといった些細な刺激によって痛みを強く感じることがあり、日常生活に支障が生じる場合があります。痛みが続くのがつらく、他の人にわかってもらえないことも重なって負のサイクルに陥る方もいます。

 男性よりも女性に多く30~60歳代の方に多い病気です。そのため自律神経失調症や更年期障害、不定愁訴(ふていしゅうそ)など、他の病気と診断もされることも少なくありません。患者さんは全国に約200万人存在すると推定されており、その数は人口の約1・7%で、世界の先進国と同程度であると推測されています。

 他の病気を併発がない場合に一次性線維筋痛症と分類し、また関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症などの膠原病(こうげんびょう)や、変形性脊椎症、脊椎関節炎などの病気が併発する場合に二次性繊維筋痛症と分類します。

 原因はまだ不明ですが神経・内分泌・免疫系の不調が考えられており、睡眠障害との関連、痛みの抑制や痛みの情報を伝える神経伝達物質との関連、脳の痛みの信号等に関わる部分の血流低下などの研究が進んでおり、また感染症、外傷(交通事故など)、外科手術、ストレス、幼児期の虐待などが発症の引き金となることもあります。