“鼻”の代表的な病気というと…

奈良県医師会 村井 孝行

 よく耳にする鼻の病気は、「花粉症」、「鼻アレルギー」や「蓄膿(ちくのう)」といったものが代表的でしょうか。

 専門的に医学用語でいうと、「花粉症」は、「季節性アレルギー性鼻炎」にあたり、その名が示す通り、花粉がアレルギー反応を起こします。春先~初夏にかけて、スギ、ヒノキ、カモガヤなど、夏~秋にかけては、イネ、ブタクサ、オオアワガエリなどの花粉がその代表です。また、「季節性アレルギー性鼻炎」に相対して「通年性アレルギー性鼻炎」があり、一年を通してアレルギー反応を起こします。その原因物質の代表として、ハウスダスト、ダニ、さらには、室内ペットを飼っている場合など、イヌ、ネコの毛等が挙げられます。この両方を合併することもあります。

 そして、この2つをあわせて、一般的に「アレルギー性鼻炎」、広い意味で「鼻アレルギー」として使用されることが多いようです。

 同様に、「蓄膿」は「慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)」のことを指します。風邪をひくと必ずといってよいほど「急性副鼻腔炎」にかかります。そして、しっかりと治りきらないで、くすぶった状態が「慢性副鼻腔炎」です。治療もせずにさらに放っておくと、副鼻腔の炎症を起こした粘膜が、鼻の中にまで出てきてしまいます。これが「鼻茸(はなたけ)」で、鼻づまりの原因になります。この「鼻茸」が鼻の中に充満してしまうと、臭いを含んだ空気の通り道がなくなってしまい、臭いまでわからなくなってしまいます。また、「慢性副鼻腔炎」は、頭痛の原因にもなります。

 皆様は聞き慣れないかもしれませんが「アレルギー性副鼻腔炎」という病気もあります。鼻の粘膜だけでなく副鼻腔の粘膜にまで、アレルギー反応がおよんでしまったひどい状態です。この病気は、非常に治りにくく治療に難渋(なんじゅう)します。元々、欧米人に多く日本人には少ないと言われていましたが、ここ近年増加傾向にあり、私達日本人の食住がほとんど西洋化してしまっていることが、少なからず影響していると言われています。 もちろん、鼻にも悪性腫瘍、すなわち〝がん〟ができます。「上顎洞(じょうがくどう)がん」はその代表です。

 また、「鼻茸」と見かけはよく似ていますが「乳頭腫(にゅうとうしゅ)」という良性腫瘍もできますが、「がん」が合併することもあります(5~10%程度)。〝鼻水〟〝鼻づまり〟〝頭痛〟〝臭いがわからない〟といっても、その原因は様々です。

 このような鼻の諸症状が治らず長引いている方は「これくらいなら我慢できるから大丈夫」と放っておかず、お近くの耳鼻咽喉科を受診し、しっかりと治療を受けましょう。