糖尿病の現状と啓発活動

奈良県医師会 赤井 靖宏

 糖尿病は今やわが国の国民病ともいわれる病気です。糖尿病を持つ人の割合はこの50年間で50倍に増加し、60歳以上の国民の34%が糖尿病かその強い疑いがあると推計されています。また、全世界でも糖尿病患者は急増しており、特に、近年の経済発展が著しい国々での糖尿病患者著増が報告されています。このような状況に鑑み、WHOは毎年11月14日を「世界糖尿病デー」と制定し、全世界で糖尿病啓発が行われるように提唱しています。わが国でも、全国の名所・旧跡が糖尿病のシンボルカラーである青色にライトアップする「ブルーライトアップ」が行われております。奈良県では吉野の世界遺産、金峯山寺・蔵王堂と薬師寺でブルーライトアップが行われました。

 糖尿病患者が増加する中での大きな問題は、糖尿病を有しながら治療を受けておられない方が多くおられるということです。奈良県では約50%の糖尿病患者さんが適切な治療を受けておられないとのデータもあります。糖尿病の治療はこの10年間で大きく進歩し、新たな仕組みで血糖をコントロールできるお薬が開発・発売されてきましたが、このような医学の進歩が十分に国民に浸透していないのです。つまり、糖尿病の啓発活動においては、①「糖尿病にならないための啓発」とともに、②「糖尿病患者さんに適切な受診をお勧めし、糖尿病合併症が発症・進展しないようにする啓発」が重要です。

 これら2つの啓発を目的として、奈良県で毎年開催される市民公開講演会が「なら糖尿病デー」です。「なら糖尿病デー」は、世界糖尿病デーに合わせて、私たち糖尿病に関わる医療従事者が協同して企画しています。本年は来る11月30日(日)11時から奈良県文化会館で開催されます。今年は、日本糖尿病財団による「糖尿病予防キャンペーン西日本地区in奈良」も同時開催されますので、皆さんに糖尿病を知っていだくためのより多くの催し物が予定され、著名な先生方による講演以外にも健康チェックや寸劇など、ためになる楽しい企画が目白押しです。この機会に糖尿病とその合併症についての知識を深め、糖尿病あるいはその進展を予防して健康長寿を達成しましょう。