乾燥肌から痒みが起こる

奈良県医師会 是枝 哲

 夏の暑い時期には皮膚科領域では、あせもや虫刺され、水虫などの疾患が増え、外来には患者さんがあふれています。ところで冬の場合ですが、皮膚科の患者さんは全体的に減るものの、肌が乾燥して湿疹ができ、痒みが起こる「乾皮症」の患者さんは逆に増えます。

 皮膚は表側から表皮層、真皮層、皮下組織と分かれていますが、表皮層のさらに表面には、表皮細胞が角化した角質層があります。この角質層は脂質などの成分で固められ外界へ水分が失われるのを防ぐバリアの役目を果たしています。ところがこのバリアに隙間ができると水分が失われ乾皮症となります。特に高齢者では角質層の水分保持能力が失われ、角質層は粉を吹いたように白くなったり、魚の鱗のようになったりします。やはり、空気の乾燥する冬場には乾皮症は悪化します。

 治療ですが、保湿のためのクリームや軟膏などの外用剤が有用です。皮膚の水分が失われると聞くと、水をたっぷり飲めばいいと思う方が時々いらっしゃいますが、それは意味がありません。保湿効果があれば市販の外用剤でもいいですが、医療機関ではワセリンなどの油基剤の軟膏、尿素入りの外用剤、ヘパリン類似物質入りの外用剤などを処方してもらえます。乾皮症だけでは必ずしもステロイド外用剤は必要ありませんが、湿疹反応も起こしている場合には使ってみてもいいと思います。塗る時期ですが風呂上がりのまだ角質層に水分が残っているときに外用するのがよいです。また、部屋の中では空気が乾燥しすぎないように加湿器を使うなど気をつけてみた方がよいでしょう。

 ここのところ、急に寒くなってきていますので、乾皮症となっている方も多いのではないかと思います。1度、自分の皮膚をじっくり観察してみてはいかがでしょうか。