よく聞こえていますか? あなたの耳

奈良県医師会 村井 孝行

 「歳をとるたびに、人の話を聞き返すことが多くなったなあ〜」「昨日は何ともなかったのに、朝起きたら耳が気持ち悪く急に聞こえづらいなあ~」といったことがありませんか? このどちらかは、急いで治療すれば治すことができる耳の症状ですが、おわかりになるでしょうか?

 では、耳が聞こえるしくみから説明します。最初に、科学的に〝音〟とは、「空気の振動により起こされる聞こえの内容」とされます。まず、この空気の振動が、外耳道(がいじどう)を通って鼓膜(こまく)を振るわせます。さらに鼓膜の奥にある三つの小さな骨(耳小骨:じしょうこうつ)に伝わり空気の振動は増強され、皆様ご存じのカタツムリ管=蝸牛器(かぎゅうき)へと伝わります。ここで、初め空気の振動が、音の元に変わります。そして、大脳の聴覚をつかさどる部分(聴覚野:ちょうかくや)に達するまで神経を伝わり、ここでやっと音として認識されます。

 空気の振動が音として伝わるまでの道のりに障害が起こると、「音が聞こえづらい」、さらには「聞こえなくなる」わけです。医学的には難聴、または聴覚障害とも言います(ここでは難聴とします)また、難聴にも、①耳小骨までの障害(伝音難聴)と、②蝸牛器〜聴覚野までの障害(感音難聴)の2種類があります。

 そして、難聴には〝治る難聴〟と〝基本的には治らない難聴〟があります。前者は右記①に当たり、代表的な病気として「急性中耳炎」「慢性中耳炎」「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」等があげられます。そして、後者が上記②なのですが、早く治療を始めれば治すことができる唯一の病気があります。それが「突発性(とっぱつせい)難聴(急に耳の聞こえが悪くなる病気)」です。難聴の程度にもよるのですが、それでも1週間以内に治療を始めなければ(3日以内が最善)、治療効果が落ちてしまい元には戻らないとまで言われています。

 では、最初の質問に戻ってみましょう。答えはどちらなのかおわかりになりましたね!