初期治療、受診

奈良県医師会 波江野 善昭

  外来診察をしていると、受傷した後しばらく放置してからや、反対に発病してからすぐに受診される方が目立ちます。また、夜間の応急診療所では、発熱して2 時間位しか経過していないにも関わらず、でも元気そうでニコニコ顔のお孫さんを抱いて「インフルエンザですか?」と飛び込んで来られる方、捻挫、打ち身や 腰痛があるのにお風呂やサウナに入り、マッサージをしてもらって悪化させる方、たかが擦り傷と放置して入浴し、傷の周りを真っ赤に腫らしてこられる方など 様々です。

 そういう方に共通して感じるのは「一刻も早く誤診なく診断して100%安全確実に治療を」という思いです。もちろん患者さんの 思いに共感し、我々医師もそういう気持ちで診療していますが、たまに「コンビニ医療」なる言葉を思い出します。私の父も医師でしたが、私が子どもの頃にイ ンフルエンザ(その頃はウイルス検査や治療薬も無く)になっても「頭冷やして、水分取りなさい。嵐が過ぎるのを待ちなさい」とだけ言われました。4、5日 間フーフーいいながら過ごしたものです。

 思えば、今より医療が充実していない時代にあっては、親の世代は明日まで子供の様子が見れるか、 今すぐに背中に担いで、ひと山超えて診療所に連れて行かないと駄目かの見極めが出来ていたのでしょう。夜間に応急診療所に(原則は投薬は3日分で後はかか りつけ医への受診指導をします)来院され「1週間前から風邪だが忙しいから風邪薬2週間ください」なんてことを平気で仰るご年配の方もおられます。

  でも発熱は〝体に有害な細菌やウイルスを駆逐するため〟下痢や嘔吐は〝体に有害なものを早く体外に排出しようとする反応〟咳や痰は〝肺や気管から有害な菌 を排出する反応〟と、そういう風に考えれば、咳・発熱・下痢などは全てが体にとって有害なことではなく、むしろ自分を守るために頑張ってくれている「健気 な行為」となります。

 大事な事は、患者さんへの慎重な観察、充分な休息と栄養・水分の補給です。