妊娠と糖尿病

 奈良県医師会 赤井 靖宏

 妊娠と糖尿病に深い関係があることを御存じですか?

 妊娠中には体内で分泌されるインスリンが効きにくくなり、高血糖気味になることがあります。この状態がひどくなると「妊娠糖尿病」になります。妊娠糖尿病は妊娠中にのみ一時的に発症する糖尿病で、家族に糖尿病がある人、肥満の人や妊娠中に体重が増えすぎる人に妊娠糖尿病が起こりやすいと言われています。妊娠中に糖尿病になった場合、今までは糖尿病と言われたことがないため、糖尿病の発見が遅れることがあります。
 また、血糖が高いまま放置すると児の奇形や発育異常の原因となります。このため、妊娠中は定期的に血糖検査が行われ、血糖値が100を超える場合にはブドウ糖負荷試験が行われます。負荷試験で陽性になった場合には、速やかに糖尿病専門医あるいは糖尿病に詳しい産婦人科医の診察を受け、適切な指導や治療を受ける必要があります。

 児を出産すると、多くの場合、妊娠糖尿病は改善する場合が多いのですが、これで終わりではありません。実は、妊娠時に糖尿病になった女性の30~60%程度が将来糖尿病を発症すると言われています。このため、妊娠糖尿病になったことのある方は、健診を受けたり、かかりつけ医で検査を受けたりして糖尿病になっていないか定期的に調べてもらう必要があります。
 出産後は育児に忙しく、なかなか定期的な検査ができずに時が過ぎてしまう場合があります。

 また〝妊娠中の糖尿病〟と〝ほんものの糖尿病〟の関連を御存じない方も多いようです。このため、次に妊娠が判明した時にはすでにほんものの糖尿病を発症されている方も少なくありません。
 妊娠糖尿病になった女性で、肥満の方、空腹時の血糖が高い方、妊娠中にインスリン治療を要した方、妊娠のたびに糖尿病になった方、年齢が高い方や家族に糖尿病がある方は、将来ほんものの糖尿病になりやすいと言われていますので注意が必要です。
 糖尿病は早期発見・早期治療が大変重要な病気です。妊娠中に糖尿病になった方は若くても定期検査をお忘れなく。