2次性高血圧

奈良県医師会 植山 正邦 

 国内に3000万人以上の患者さんがいるといわれる高血圧の殆ど(90%)は、未だ原因が不明で遺伝的素因や生活習慣が関わって発症すると考えられている「本態性高血圧」です。それに対して頻度は少ないのですが(10%)原因が明らかな高血圧を「2次性高血圧」と呼びます。その中で1番多いのが腎臓に原因がある高血圧です。慢性腎臓病等によって腎機能障害が起こり、水分や塩分の排泄が損なわれる腎実質性高血圧と、腎動脈に動脈硬化や繊維筋性異形成という変化をきたし狭くなり、レニンと呼ばれる昇圧物質が増加する腎血管性高血圧があります。腎血管性高血圧は、経皮的腎動脈形成術により改善することがあります。次に多いのが昇圧ホルモンを産生する腫瘍(しゅよう)による高血圧です。原発性アルドステロン症は、腎臓の上にある副腎の皮質に発生した腫瘍によりアルドステロンが増加して高血圧が起こります。腫瘍は小さくて女性に多い傾向があり、手足の痺(しび)れや脱力が認められることがあります。褐色細胞腫は、副腎の髄質等から発生するアドレナリンやノルアドレナリンを産生する比較的大きな腫瘍で、頭痛、発汗、手の震え、動悸(どうき)、糖尿病や、発作性の高血圧、立ち眩みを呈します。クッシング症候群は、脳腫瘍や副腎腫瘍により副腎皮質ホルモンのコルチゾールが過剰になる為に起こる高血圧で、女性に多く、肥満、満月様の赤ら顔、妊娠線のような皮膚線条、多毛、月経異常、糖尿病、骨粗鬆症等が見られます。また睡眠時無呼吸症候群等でも高血圧が見られます。

 2次性高血圧は稀な疾患ですが、早期に発見すれば適切な治療により完治することも可能です。若い時に発症する重症の高血圧、50歳を過ぎてからの高血圧、急に発症した高血圧、難治性の高血圧、血圧値に比べて合併症といわれる脳血管、心、腎障害が強い場合には、2次性高血圧の可能性が疑われます。それぞれの疾患には特徴的な身体所見、血圧変動があり、また特殊な血液・尿検査、画像診断がありますので、心当たりのある方はかかりつけ医にご相談ください。