僕のことをお忘れではありませんか?〝セアカゴケグモ〟です! 

奈良県医師会  村井 孝行

 セアカゴケグモは、元々は日本に生息していないはずの生物(外来生物と呼びます)で、さらに毒グモということもあり、「外来生物法」という法律で「特定外来生物」に指定されています。

 セアカゴケグモは、1995年に日本国内で初めて、大阪府高石市でその生息が確認され、現在は定着してしまっていると考えられています。その後、全国各地で相次いで発見されており、最近では、昨年9月に東京都江東区と三鷹市で発見されています。現在、全国47都道府県中37都府県で、その生息が報告されています。奈良県においても、2003年に生息が確認されています。

 セアカゴケグモの特徴は、その名が示す通りお腹(なか)と背中の部分に帯状の縦方向に伸びる真っ赤な模様(縦条(じゅうじょう))です。これは「メス」だけにあり、「メス」だけが毒素を持っています。セアカゴケグモの性格は、非常におとなしい上に攻撃性はなく、驚かされたりすると死んだふりをするほど臆病なクモです。ですから、素手で触ったり捕まえたりしないかぎり、まず咬(か)まれる心配はありません。万が一咬まれてしまうと、その直後に痛みはほとんどありませんが、しばらくして(5~60分位)その部位が痛みだして次第に強くなり、咬まれた手足全体にまで広がっていきます。また、全身の発しん、発熱、嘔気(おうき)・嘔吐(おうと)、頭痛、腹痛、呼吸困難、徐脈(じょみゃく)・頻脈(ひんみゃく)、高血圧などの全身症状が出て重症化する事もありますが、非常に稀な事です。しかし、子供(特に乳幼児)や高齢者が咬まれると、重症化する恐れがあり要注意です。また、野外で作業する際には、咬まれないために必ず手袋をする必要があります。

 セアカゴケグモを見つけた時は、家庭用殺虫剤(ピレスロイド系)や熱湯をかけたり、靴で踏み潰(つぶ)してもかまいません。しかし、一匹でも見つかれば周りにも潜んでいる可能性もあり、駆除(くじょ)する必要があります。

    (写真上:メス)有毒、体長は約1cmで腹部と背中に赤色の模様があります。
    (写真下:オス)無毒、体長は約0.3cm~0.5cm、腹部と背中は灰白色をしています。