あなたの肝臓は大丈夫? もしかしてウイルス性肝炎では…

奈良県医師会  村井 孝行

 肝炎を起こす原因には色々とありますが、日本における肝炎のほとんどは、ウイルスによって引き起こされるウイルス性肝炎です。なかでも、B型およびC型肝炎ウイルスの患者と感染者を合わせると、300万人以上にものぼると推測されており、わが国における最大級の感染症であると言われています。

 そこで国は、平成20年度より毎年年間200億円前後もの肝炎対策予算を継続確保した上で、平成25年までの6年間で、延べ約40万人のウイルス性肝炎の方が医療費助成を受け治療することができました。また、医療費助成を行うだけではなく〝ウイルス性肝炎治療促進のための環境整備〟〝診療体制の整備〟〝肝炎ウイルス検査の促進〟〝正しい知識の普及と啓発〟〝研究の推進〟と多方面にわたり力を注いでいます。さらに、特にここ数年間は研究の推進に全年間予算の1/4を割り当て、新しい治療薬や新たな治療法の研究開発等に積極的に取り組むことで、その成果も上がっています。

 そもそも肝臓は、非常に強い臓器なので症状がなかなか現れず、肝臓の機能を調べる血液検査(ALT、AST等)でもなかなか異常値が出てきません。このため肝臓は〝沈黙の臓器〟とまで言われており、症状が出て来た時すでに肝臓はかなりのダメージを受けています。そこで、ご自身がウイルス性肝炎に罹(かか)っているのかわからない方や罹っているのがわかっていても放置されている方に対しても、新たにウイルス性肝炎患者等の重症化予防推進事業が計画されています。これは、ウイルス性肝炎患者等を早期に見つけ出すと共に、定期的な健康相談や諸検査でフォローアップを行うことで、治療につなげ重症化を防止しようというものです。

 また、この事業では、肝炎ウイルスの有無を調べる検査だけでなく、肝臓等の機能や腫瘍の有無を調べる検査(腫瘍マーカー)、超音波(エコー)検査も盛り込まれています。さらに利便性も考慮され、保健所のみならず各都道府県が指定したお近くの医療機関等でも、これらのすべてが受けられるようになっています。すでに今年1月時点で26都道府県での実施が計画されており、奈良県においても年内を目途(めど)に実施される予定になっています。