「神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)」その1

奈良県医師会 岩井 務

 普段私たちが感じる「痛み」には、切り傷や打撲による、すぐに治る痛みや長く続く痛み、刺すよう痛みやだるい痛みなど、様々な「痛み」があります。その「痛み」 は、引き起こす原因によって大きく三つに分けられます。炎症や刺激による痛み(侵害受容性疼痛)は、ケガや火傷をしたときの痛みです。ケガをするとその部分に炎症が起こり、痛みを起こす物質が発生します。この物質が末梢神経にある「侵害受容器」というところを刺激するため「侵害受容性疼痛」と呼ばれています。このような痛みのほとんどは急性の痛みで、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)や腱鞘炎、関節リウマチなどがあります。

 神経が障害されることで起こる痛み(神経障害性疼痛)は何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。帯状疱疹が治った後に長引く痛みや、糖尿病の合併症に伴う痛みやしびれ、坐骨神経痛、また脳卒中や脊髄損傷による痛みなどがあります。傷や炎症などがみえないにも関わらず痛みがある場合、神経が原因になっていることがあります。心理・社会的な要因による痛みは、不安や社会生活で受けるストレスなど、心理・社会的な要因で起こる痛みです。

 このように「痛み」には、その原因がはっきりわかるものと、わかりづらいものがあります。傷は治ったのに痛みだけが残る、病気をきっかけに長く続くなど、何らかの原因で神経が障害されて痛みが生じていることがあります。このような痛みを、「神経障害性疼痛」といいます。痛みの種類を見分けることは大変難しいことですが、以下のような症状がある場合は、神経障害性疼痛かもしれません。

  ○しびれ感を伴う痛みを感じる

  ○発作のように強い痛みが、短い間隔で襲ってくる

  ○普段はなんでもない程度の刺激に対して強い痛みを感じる

  ○少しの痛みが、とてもひどい痛みに感じる

  ○強い針で刺したような痛みを感じる・電気が走るような痛みを感じる。

 

 「神経障害性疼痛」の原因は次のような場合があります。

  ○帯状疱疹ヘルペスなどのウィルスの感染によって神経が障害された

  ○糖尿病などの代謝障害によって神経が障害された

  ○脊柱管狭窄やヘルニアによって神経根が圧迫、障害された

  ○化学療法の副作用によって神経が障害された

  ○事故やケガなどで神経が切断して障害を受けた

  ○癌などの腫瘍によって神経が圧迫された・癌などの腫瘍が神経に広がったなどがあります。

 

 次回は、神経障害性疼痛の治療についてお話しします