奈良県医師会 植山 正邦
「白衣高血圧」という言葉はどこかで耳にされたことのある方は多いと思います。白衣高血圧は、日常生活では正常血圧ですが、診療所や健診で医師や看護師によって測られた血圧が高血圧を示す現象のことです。白衣高血圧の一部は持続性の高血圧へ移行しますが、高血圧合併症と言われる脳卒中、心疾患、腎疾患などの臓器障害の危険性は高血圧ほど高くないといわれています。
家庭用の電子血圧計が普及して家庭血圧が簡単に測れるようになり、また診療用の携帯型自動血圧計で24時間自由行動下血圧測定(Ambulatory Blood Pressure Monitoring : ABPM)が出来るようになりましたので、近年、「仮面高血圧」が問題になっています。仮面高血圧は、逆に診察室での血圧が正常(140/90㎜Hg未満)であるのに、診察室外の血圧が高血圧を示す(家庭血圧で135/85㎜Hg以上、ABPMで130/80㎜Hg以上)状態です。
厄介なことに仮面高血圧の臓器障害の危険性は、通常の高血圧かそれ以上といわれています。健康診断で高血圧は無いと言われても、知らない間に高血圧の合併症が起こってしまう可能性があるのです。
仮面高血圧には主に早朝高血圧、夜間高血圧、昼間高血圧の3つのタイプがあります。早朝高血圧は、早朝の血圧が就寝前より高い状態で、特に朝起きる前より急に血圧が上昇するモーニングサージは脳心血管障害と強い関連が認められています。夜間高血圧は、普通は就寝中には血圧は低下しますが、夜間睡眠中にも血圧が下がらない状態が続いたり、夜間になって血圧が上昇するタイプで、腎機能障害や睡眠時無呼吸症候群、二次性高血圧等の関与が考えられています。昼間高血圧はストレス高血圧ともいわれ、職場での仕事や人間関係、家庭での家事や育児、介護のストレスにより血圧が上がると考えられています。
仮面高血圧は高血圧全体の10~25%を占めるといわれていますので、まず家庭血圧を測っていただくように、そして一度、起床時、昼間、就寝時にも測定していただければと思います。