認知症にもいろいろ

奈良県医師会    原  健二

 最近、認知症がテレビや新聞、雑誌の話題となることがふえたように思います。それほど、みなさんの関心事となっているということでしょうか。

 認知症は、脳の病気で記憶障害や判断障害、実行機能障害などのためさまざまな症状が出現して徐々に進行し、家庭での生活や仕事に支障をきたすようになります。さらに症状が進むとほかの人の手助けも必要となります。

 もっとも多いのは、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)で、もの忘れがひどくなって 「認知症」という用語は病名として使われることもありますが、これらの症状をひとまとめにした症候群です。原因となる病気はたくさんありますが代表的なものは4つです。

  同じことばかり言う、さっきしたこともすっかり忘れてしまうといった症状が徐々に進行します。お金を盗られたと騒いだり(盗られ妄想)外に出て行って帰れなくなったり(徘徊)という症状も出てくると家族との生活も大変になります。原因としては、脳の中にアミロイドという蛋白がたまってそれが神経細胞に障害を起こすと考えられています。最近、その病態についてはかなり詳しく分かってきましたが、まだまだ解明には至っていません。

 次いで多いのは脳梗塞や脳出血(あわせて脳卒中もいいます)が原因で生じる血管性認知症(脳血管性認知症)で、手足の不自由やしゃべりにくさを伴うこともあり、脳卒中を繰り返すほど症状が悪くなります。治療はもちろんのこと脳卒中の予防が認知症を防ぐことにもつながります。

 初期にはもの忘れが目立たず、だれもいないのに誰かが部屋にいると訴えたり(幻視)、家族を他人と間違えたり(人物誤認)、しっかりしているときとそうでない状態が急激に変化するという症状を特徴とするレビー小体型認知症も注目されています。前頭側頭型認知症はすでに述べてきた認知症とはまったく異なった病像で、行動の異常や性格の変化で家族がおかしいと気づきます。

 ひとことで認知症といっても、それぞれの病気で症状は異なります。そのため診断が大切で、治療やケアについてもその人の病気にあった対応が必要です。