奈良県医師会 鹿子木 英毅
結核は結核菌が体の中に入り増えることで起こる感染症です。空気感染により人から人に伝染しますが、結核菌に感染しても必ず発病するわけではありません。人によっては感染してから何十年も経ってから発病することもあります。昭和20年代には日本の死亡原因の第1位でしたが、適切な治療法が普及したことにより患者数は激減しました。それでも未だに年間2万人以上の方が新たに結核を発病し、先進国の中では感染率、死亡率とも高い状態が続いています。
主に呼吸器に症状の出る肺結核とそれ以外の臓器(リンパ節、骨、腎、腸など)が侵される肺外結核に分類されますが、日本では肺結核が8割以上を占めています。肺結核の初期症状はカゼに似ており、咳や痰、全身のだるさ、微熱などの症状が長く続くことが特徴です。病気が進行してくると体重減少や寝汗がみられることもあります。
結核が疑われた場合には、胸部レントゲン撮影や喀痰(かくたん)検査が行われます。結核の感染を調べるためにはツベルクリン反応が行われますが、最近ではBCGワクチンの影響が出にくい血液検査を用いてより正確に調べることができるようになりました。
結核と診断されたら、3~4種類のお薬を用いた治療が行われます。治療期間は年齢や病状によって多少前後しますが、6~9ヵ月が一般的です。痰の中に結核菌が確認された場合、他人にうつす心配がなくなるまでの期間(平均2ヵ月程度)、入院して治療を受けるのが原則です。適切に治療すれば治療成績は良好で、再発率は5%以下とされています。ただし指示通り薬を服用しなかったり、途中で治療を中断してしまった場合、薬の効きにくい耐性菌が現れることがあります。こうなると治療が大変困難となり、長期の入院が必要となる恐れがあります。医師の指示に従って治療を続けることが非常に重要です。
初期の結核は特徴的な症状に乏しいことから、発見が遅れて学校や職場での集団発生を引き起こし、社会問題となることがしばしば報告されます。2週間以上咳、痰が続くようなら必ずかかりつけ医を受診してください。