「ストレスチェック」が12月から始まります

奈良県医師会 村井 孝行

 『労働安全衛生法』とは、「労働者が職場で働く上での安全・健康の確保と、職場環境の快適性」が定められた法律です。時代の変遷(へんせん)と共に今まで幾度となく改正され、働く人々の命と健康が守られてきました。

 現在、事業所において最も問題となっていることは、労働者のメンタルヘルス不調の防止です。まず、平成18年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が策定(さくてい)され、事業者が実際にどのようにメンタルヘルスケアに取り組んでいけばよいのか示されました。翌年に33.6%の事業所で「メンタルヘルス対策」が取り組み始められ、平成25年には60.7%とほぼ倍近くまで大幅に増加しました。

 しかし、未だにメンタルヘルス不調により休職→職場復帰→再休職を繰り返す、さらには仕事による強いストレスで精神病を患(わずら)い労災認定にまで至る労働者が後を絶たないというのも現状です。

 そこで今回、平成26年6月19日に「労働安全衛生法の一部を改正する法案」が国会で可決され「改正労働衛生法」が成立し、この法律が改正されることになりました。今回の改正では、従業員を50人以上雇(やと)っている事業所で、事業主にストレスチェックを行うことが義務づけられました。これがいわゆるストレスチェック義務化法で、今年の12月から実施されます。

 今までは、主にメンタルヘルス不調に陥(おちい)った労働者に対して取り組まれてきましたが、今回の対策は労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止していこうとするものです。また、ストレスチェックを受けることで、従業員が不利益を被(こうむ)らないように、①本人の承諾なしに産業医はその結果を事業主に知らせてはならない、②その結果を理由に退職勧告や解雇してはならない、③不当な配置転換や役職変更を行ってはならない、など色々と配慮(はいりょ)されています。

 一方で、実際にストレスチェックを受ける従業員に、必ずしもその受診が義務付けられていません。また、従業員が50人未満で小規模に事業を営んでいる営業所では、当分の間、ストレスチェックの実施を行うことが望ましいとされています。