糖尿病合併症を防ぎましょう

奈良県医師会 赤井 靖宏

 糖尿病は、体内で分泌されるインスリンが不足するか、その作用が障害されて、血液中の糖分(血糖)が増加する病気です。糖尿病は、血糖が高いことよりも、高い血糖値が全身の血管を悪くして臓器障害を起こすことがより大きな問題です。

 糖尿病の血管障害は、目(網膜)、腎臓と神経を好んで悪くします。特に、目と腎臓が障害されるとわれわれの健康は大きく損なわれます。例えば、目の血管が悪くなると、視力が悪くなります。糖尿病による視力障害は全視力障害の約20 %を占めています。また、腎臓が悪くなると、透析や移植などの治療が必要になります。現在わが国では、30万人以上の患者さんが透析治療を受けていますが、そのうちの約半数の患者さんは糖尿病が原因で腎臓が悪くなっています。

 それでは、これらの障害を予防することはできるでしょうか?

 予防のポイントは「早期発見・早期治療」です。糖尿病になっても早い時期に発見されると、早期から臓器障害の予防が可能です。例えば、糖尿病で血管の障害を防ぐためには、血糖値をできるだけ正常範囲に維持することが重要ですが、糖尿病が早期に診断されると、少ないお薬で血糖値を適正にコントロールすることができ、目や腎臓の障害を予防できます。また、仮に目や腎臓の障害がすでにある場合でも、早期に発見されればこれらの障害の進行を抑えることができます。最近の医療技術の進歩は、早期治療によって糖尿病による視力障害者を減少させました。また、腎臓障害の早期に尿にでる「微量アルブミン」を検査すれば、腎臓がひどく悪くなる前に適正な治療を行って腎臓障害の進行を防ぐことができます。

 糖尿病を早期に発見して予防するためには、定期的な健診受診が重要です。早期の糖尿病には全く症状がなく、血液検査を施行しないと診断することができないからです。この記事を読まれたみなさん、これも何かのご縁です。この機会に自分が糖尿病になっていないか、かかりつけ医で調べてもらってください。あなたの主治医が「命の恩人」になるかもしれません。